演題

PJ5-4

術前放射線化学療法を施行された局所進行膵癌における偶発的腹膜播種の病態解明を目的とした臨床研究

[演者] 加藤 宏之:1
[著者] 水野 修吾:1, 早崎 碧泉:1, 村田 泰洋:1, 岸和田 昌之:1, 栗山 直久:1, 安積 良紀:1, 臼井 正信:1, 櫻井 洋至:1, 伊佐地 秀司:1
1:三重大学大学院 肝胆膵・移植外科学

背景
近年の局所進行膵癌(PDC)に対する術前治療や血管合併切除を含めた集学的治療が著しく進歩しているにもかかわらず腹膜播種は未だ制御が困難な病態である.特に膵癌術前化学療法を施行している症例では治療開始時に腹膜播種を示唆するような所見がないにも関わらず,治療中,もしくは開腹時に偶発的に腹膜播種が発見されることも少なくない.
方法と対象
当科で根治手術を目的として術前CRT (Gem or Gem+S1 +45-50.4Gy)を施行された治療前に明らかな遠隔転移のないPDC261例 (Resectable;56例,BR:78例,Unresectable:127例 JPS7th)を対象とした.単変量,多変量解析を用いて偶発的腹膜播種の治療前危険因子を同定するとともに治療中に腹膜播種をきたした26例の予後因子解析を行った.
結果
261例全体の3年,5年生存率:DSS (Disease specific survival)は28%,26%だった.根治目的手術は156例 (56%)に施行され,その3年,5年DSSは41%,36%と比較的良好だった.しかしながら,術前もしくは術中,偶発的に発見された腹膜播種は26例 (10%)でそれらの予後は極めて不良であった (3年DSS:16%,5年DSS:0%). 腹膜播種の危険因子として単変量解析では高好中球・リンパ球比(NLR) (p=0.005), 血中リンパ球数低下 (,CEA高値が挙げられ,多変量解析では高NLRが唯一の危険因子だった.既知の血管浸潤因子や切除可能分類は危険因子として全く挙がらなかった.次に腹膜播種が起こった26例の予後(1年生存率)について解析してみると年齢が65歳以上 (<65 vs. >65: 67% vs 28%, p=0.02),Gemcitabinet単独療法(GS vs.G alone: 56% vs 11%, p=0.003),BRもしくはresectable PDC (UR vs BR vs R: 64%, 0%, 0%, p<0.0001)の症例の予後は極めて不良であった.
結語
術前治療を施行しているPDCに偶発的に発生する腹膜播種をコントロールすることは困難であるが治療前NLRが高値の症例で有意に多く発生していた.GS療法はGemcitabine単独療法に比して腹膜播種症例の予後延長効果が期待できるが,高齢,切除可能もしくは境界癌に発生する腹膜播種症例の予後は極めて悪く,かかる症例は潜在的に腫瘍悪性度が高いと考えられた.
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