演題

癌患者の治療法決定における脆弱性及び栄養学的指標の役割について

[演者] 北野 睦子:1
[著者] 右田 和寛:1, 松本 壮平:1, 若月 幸平:1, 伊藤 眞廣:1, 中出 裕士:1, 國重 智裕:1, 中谷 充宏:1, 庄 雅之:1
1:奈良県立医科大学医学部 消化器外科・小児外科・乳腺外科学

【背景】
GFI(Groningen Frailty Indicator)及びSNAQ(Short Nutritional Assessment Questionnaire)は日常生活動作制限,体重減少の有無などを問う簡便な質問票であり,それぞれ脆弱性及び栄養状態の指標が算出される.今回背景の多様な癌患者に対し適切な治療方法を決定する上で,GFI値とSNAQ値が持ちうる役割について検討した.
【方法】
2016年2月から10月までの当科における上部消化管癌初診患者を対象とし,初診時に質問票を配布,回収した.そのうち治療方針が決定された100例について患者背景,手術の有無,手術成績について検討を行なった.
【結果】
患者は男性70例,女性30例で,平均年齢は69.5歳,胃癌76例,食道癌24例であった.患者背景において,高齢患者では平均GFI値が有意に高く(70歳未満/以上=2.09/3.70,p<0.001),初診時愁訴のある患者でSNAQ値が有意に高かった(0.65/1.42,p=0.001).栄養状態については,ROC曲線よりカットオフ値をGFI値4,SNAQ値2として比較したところ,GFI値はSNAQ値,BMIと関連を示し(GFI値3以下/4以上=平均SNAQ値0.94/1.48,p=0.041,平均BMI22.7/21.1kg/m2,p=0.047),SNAQ値はBMI,PreAlb値,Hb値と有意に関連を示した(SNAQ値1以下/2以上=平均BMI23.1/20.4kg/m2,p<0.001,平均PreAlb値28.7/24.0mg/dL,p=0.038,平均Hb値13.2/12.0g/dL,p=0.005).腫瘍因子については,胃癌,食道癌ともに腫瘍マーカー,TNM因子,進行度においてGFI値に有意差は認められなかった.SNAQ値は胃癌において進行度が高いほど高値を示し,癌の病勢を反映していた(cStageI,II/III,IV=平均SNAQ値0.81/2.00,p<0.001).治療方法の違いによる検討では手術66例,非手術34例で,平均年齢は手術/非手術=67.8/73.8歳と有意差を認めた(p=0.009).また非手術群ではGFI値が有意に高く(手術/非手術=2.30/4.18,p=0.001),非手術の割合はGFI値3以下で23.2%,4以上で58.1%であった(p=0.001).また多変量解析の結果,GFI値4以上は独立した非手術予測因子であった(p=0.018).手術症例においてはGFI値,SNAQ値ともに病理学的進行度,手術時間,出血量,術後在院日数,術後合併症の有無との関連は認められなかった.
【考察】
GFI値,SNAQ値は手術患者における腫瘍因子,手術成績と関連を認めなかったが,患者の治療前の全身状態を反映すると考えられ,治療法決定に関与する可能性が示唆された.
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