演題

胃癌術後のビタミンB12補充療法

[演者] 利野 靖:1
[著者] 大島 貴:1, 佐藤 勉:1, 田村 周三:1, 青山 徹:1, 天野 新也:1, 吉川 貴己:2, 長 春彦:2, 湯川 寛夫:3, 益田 宗孝:1
1:横浜市立大学医学部 外科治療学, 2:神奈川県立がんセンター 消化器外科, 3:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター

はじめに
胃癌術後のビタミンB12欠乏は教科書にも掲載されている合併症の一つであり,長期の生存者には貧血,神経症状などでQOLを低下させる.ビタミンB12の吸収は能動的と受動的な吸収がわかっている.能動的吸収には胃の壁細胞から分泌される内因子が重要で,この因子がビタミンB12につくことで小腸の受容体にとらわれて,吸収するものである.ビタミンB12は1日に胆汁に0.5-5µg排泄されているが,能動的吸収で再吸収されている.受動的吸収は濃度依存の吸収で,経口摂取の1%未満しか吸収しないといわれている.胃全摘術はこの壁細胞を完全に取り除くため受動的吸収しか行われないことになり,胆汁からの排泄も加わり,ビタミンB12の低下が起こることは必至である.このため治療はビタミンB12の筋肉注射が一般的だが,経口投与の有用性も報告されている.我々も外来でビタミンB12の補充療法を経口投与でも行っている.胃全摘症例で投与経路,投与量,効果を検討したので報告する.
方法
胃全摘をおこなった2000年以降の胃全摘を施行し,ビタミンB12の補充療法を確認できた31例を対象とした.男性26例,女性5例.年齢の中央値は71歳.
結果
最初に補充療法は14例に筋肉注射が行われ,17例に経口投与(3錠/日)を行っていた.1例は拒否したため継続治療は行っていないが,治療を勧めている.30例は継続的に内服治療を行っている.3錠が7例,2錠が14例,1錠が9例に行われていた.3錠投与の1例を除き全例ビタミンB12は正常であった.この1例は3か月内服3か月休薬の6か月followの症例であった.また補充療法開始で3か月ごとの筋肉注射で全く正常値にならなかったが,経口投与で正常値を保つようになった症例も経験している.
まとめ
胃全摘症例では補充療法は必要である.筋肉注射はビタミンB12の吸収を考慮すると筋肉注射が理想的なものと考えられるが,経口投与を継続したほうが正常値を維持できそうであった.また,投与量も3錠ではなく,2錠,1錠と減らしても,継続投与ができれば能動的吸収ができなくても正常値を維持するには十分な可能性があると考えられた.
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