演題

SY13-2

右肝動脈浸潤を認める進行胆嚢癌に対する根治性と安全性を確保した過不足のない術式選択の試み

[演者] 久保木 知:1
[著者] 野島 広之:1, 清水 宏明:1, 吉冨 秀幸:1, 古川 勝規:1, 高屋敷 吏:1, 高野 重紹:1, 鈴木 大亮:1, 宮崎 勝:1, 大塚 将之:1
1:千葉大学大学院 臓器制御外科学

【背景】右肝動脈浸潤を伴う進行胆嚢癌に対して,多くはS4a切除を伴う右肝切除および肝外胆管切除(BDR)が行われるが,その周術期リスクは高い.我々は最近,特に高齢者において胆嚢癌に対する胆道再建を伴う拡大肝切除は術後重症合併症発症率が高いことを報告した(Ann Surg 2016).よって,根治性を確保しつつ過度の侵襲を回避するような過不足のない術式選択が重要である.
【対象】我々は総胆管付近において右肝動脈浸潤を認めるが肝内でのグリソン浸潤は認めない進行胆嚢癌に対して,右肝動脈合併切除を伴う肝中央下区域切除およびBDRを施行している.肝内で左右肝動脈をつなぐ葉間動脈が存在すること,裸領域や横隔膜下動脈より肝内の右肝動脈への血流が期待されることより,本術式では右肝動脈は非再建とした.
【Video】55歳女性.上腹部痛にて来院.諸検査にて胆嚢頚部を中心にS4a・S5領域に肝浸潤を認める進行胆嚢癌の診断となった.右肝動脈および門脈右枝は総胆管右側にて腫瘍浸潤を受けるが,肝内でのグリソン浸潤や左グリソン浸潤は認めず,黄疸も認めなかった.よって,上述の手術を選択した.肝右葉の脱転は最小限にとどめ,右肝動脈を中枢側は左肝動脈分岐直後で結紮切離.末梢側は肝実質に入る直前で切離し,動脈血の逆流を確認した後に結紮した.肝実質はエコーにて確認しながら,肝内の右グリソンおよび前区域グリソンを温存しつつ,腫瘍を露出することなく肝S4a+S5切離にて腫瘍を摘出した.手術時間4時間44分,出血量240gであった.病理上はすべてのマージンにおいて癌陰性であった.術後,肝切離面からの軽微な胆汁漏およびS6肝膿瘍を認めたが,ドレナージにて改善.術後2週間での造影CTでは左肝動脈から葉間動脈を介して右肝動脈がきれいに造影される像が確認された.
【考察】当教室では同様の手術を今まで8例経験しており,全例R0手術が可能であり,Clavien-Dindo grade IV以上の重症合併症は認めなかった.同時期に進行胆嚢癌に対して右肝切除を施行した54例と比較すると,前述の8例は有意に術後重症合併症発症率,手術関連死亡率が低率であり,また,術後の全生存率および無再発生存率はほぼ同等であった.
【結語】右肝動脈浸潤を認めるが肝内でのグリソン浸潤は認めない進行胆嚢癌において,右肝動脈合併切除を伴う肝中央下区域切除は根治性を確保しつつ過度の侵襲を回避することが出来る過不足のない術式として有用である.
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