演題

胃癌根治術後における高齢者特異的な予後予測因子の検討

[演者] 黒田 大介:1
[著者] 澤山 浩:1, 岩槻 政晃:1, 問端 輔:1, 江藤 二男:1, 中村 健一:1, 坂本 快郎:1, 馬場 祥史:1, 吉田 直矢:1, 馬場 秀夫:1
1:熊本大学大学院 消化器外科学

【背景】近年高齢化に伴い,高齢者胃癌症例が外科治療の対象となる頻度が増加している.高齢者においては,癌の進行のみならず,全身状態と手術侵襲,合併症や後遺症を考慮し,真に生命予後に寄与する治療を慎重に選択する必要がある.本検討では,胃癌根治術施行症例において,高齢者と非高齢者における臨床因子を比較することを通し,腫瘍因子に追加して考慮すべき高齢者に特異的な予後規定因子について比較検討した.
【対象と方法】2005年から2014年まで胃癌根治術を施行した445症例を75歳未満(Y群),75歳以上(E群)に分け,各群における腫瘍因子の影響を同等とすべく,原発巣局在,肉眼型,腫瘍径,分化度,T因子,N因子,ly,v,術前CEA・CA19-9値について傾向スコアマッチングを用いて各群1:1で症例の抽出を行い,臨床因子,全生存率に対する予後因子について比較検討を行った.
【結果】傾向スコアマッチングの結果,各群138例で検討を行った.背景因子においては,術前BMI(Y/E=23.3±3.8/21.93±3.45, p=0.002),Hb値(Y/E=13.0±1.9/11.7±1.9 g/dL, p<0.001),Alb値(Y/E=3.91±0.47/3.60±0.58 g/dL, p=0.002),eGFR(Y/E=77.9±16.2/64.3±16.6 mL /min/1.73m^2, p<0.001)に有意差を認めた.また,予後因子・栄養マーカーとして報告のある,modified Glasgow Prognostic Score(0/1/2= Y: 94.2/4.4/1.5% vs. E: 89.1/2.2/8.8%, p=0.012),prognostic nutritional index(Y/E=47.7±6.2/44.0±7.0, p<0.001),controlling nutritional status(<3/≥4= Y: 91.6/8.4% vs. E: 78.8/21.2%, p=0.005)についても有意差を認めた.手術因子については,両群間で有意差は認めなかった.全生存率に対する多変量解析では,両群でpStageは予後因子であった(Y: HR 1.77, 95%CI 1.04 - 3.01, p=0.04; E: HR 1.95, 95%CI 1.33 - 2.86, p<0.001).一方で,Y群では残胃の存在が独立予後因子であった(HR 0.26, 95%CI 0.10 - 0.69, p=0.007)のに対して,E群では残胃の有無は予後因子とならなかった.また,E群でのみBMI<18.0が独立予後因子であった(HR 2.78, 95%CI 1.20 - 6.44, p=0.017).【結論】75歳以上の高齢者において,低BMIが腫瘍因子に加えて考慮すべき特異的な予後因子であった.残胃の有無が独立予後因子とはならなかったことも考慮すると,75歳以上の低BMI症例は,術式にかかわらず胃切除後の積極的な栄養サポート,リハビリなどの介入の候補と考えられる.
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