演題

高齢者患者における胃癌術後合併症発生の予測因子

[演者] 若原 智之:1
[著者] 植野 望:1, 田村 太一:1, 宗 慎一:1, 前田 哲生:1, 金光 聖哲:1, 吉川 卓郎:1, 芦谷 博史:1, 土田 忍:1, 豊川 晃弘:1
1:淀川キリスト教病院 外科

【背景】我が国では世界に類を見ない速度で高齢化が進んでおり,今後手術症例の高齢化が確実視されている.一方で高齢者では内分泌,免疫,呼吸器,心血管,腎泌尿器などの各臓器系の予備力が低下しており,手術におけるリスクが高いと考えられる.このような中,高齢者の術後合併症の予測因子を同定することは手術をより安全に行うにあたり重要であり,当院における胃癌手術症例を後方視的に検討した.
【方法】2007年1月から2015年12月までに当院で胃癌に対して待機的切除を行った565例の内,残胃癌症例12例,膵頭十二指腸切除例5例,姑息的な胃部分切除例4例を除く544例を対象とし,75歳以上の高齢者群171例と75歳未満の対照群373例に分けて臨床病理学的データの比較検討を行った.
【結果】背景因子では何らかの併存疾患を有する患者の割合は高齢者群81.3%,対照群60.9%で,高齢者群で有意に高かった( p < 0.001).また,ASA PS class ≥3 (25.7% vs. 12.1%, p < 0.001),開腹手術(80.7% vs. 62.2%, p < 0.001),胆嚢摘出術施行(28.1% vs. 18.5%, p = 0.012)の割合が高齢者群で高かった.高齢者群ではAlb値,リンパ球数,Hb値,およびeGFR値が有意に低く,BMI,術式,リンパ節廓清度,膵脾合併切除率,およびpStageには有意差は認められなかった.Clavien-Dindo (以下CD) 分類 ≥Ⅱの術後合併症は高齢者群では45例(26.3%),対照群では60例(16.1%)に認められ,高齢者群で有意に多かった(p = 0.005).合併症の詳細を検討したところ縫合不全が高齢者群に有意に多く認められた(6.4% vs. 1.6%, p = 0.003)が,心血管系合併症,感染性合併症を含め,その他の合併症発生頻度には差は認められなかった.また,CD分類 ≥Ⅲa以上の重症合併症発生頻度は高齢者群に多い傾向にあった(10.5% vs. 6.2%, p = 0.074).術後合併症全体の予測因子を検討したところ単変量解析で出血量 ≥320mlが挙げられ,多変量解析でも同様であった(p = 0.001).高齢者群で多くみられた縫合不全の予測因子を検討したところ単変量解析では出血量 ≥219ml (p = 0.002)が挙げられ,胃全摘(p = 0.057)にも比較的関連性が認められた.多変量解析では出血量 ≥219mlが予測因子として同定された(p = 0.004).
【結論】高齢者群では胃癌術後の合併症発生頻度が有意に高く,術中出血量が予測因子であった.また,高齢者群では特に縫合不全発生頻度が高く,同様に術中出血量が予測因子であった.
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