演題

門脈系腫瘍栓を伴う胃癌に対し,門脈合併切除再建を含む拡大手術による根治切除をし得た一例

[演者] 園田 至人:1
[著者] 芝崎 秀儒:1, 新村 兼康:1, 加藤 敬二:1, 沖 彰:1, 中村 純一:1, 吉留 博之:1
1:さいたま赤十字病院

【はじめに】
胃癌では門脈系に腫瘍栓を伴うことは比較的稀である.一方cStageⅣ胃癌に対する治療は化学療法が第一選択ではあるが,切除可能なcStageⅣの治療方針は定まっていない.今回門脈本幹流入部までに及ぶ脾静脈腫瘍栓を伴った進行胃癌に対し根治切除を行った一例を経験したので報告する.
【症例】
症例は75歳, 女性.検診の胃透視で胃体中上部に隆起性病変を指摘され,上部消化管内視鏡検査にて胃角部から噴門直下の小弯中心に3型腫瘍を認め(低分化から中分化腺癌),精査加療目的に当科紹介となった.CEA 48.9 ng/ml, CA19-9 122.4ng/mlと高値であった.腹部造影CTでは胃小弯側の壁肥厚を認め,壁在のリンパ節腫大に加え,左胃静脈から脾静脈,門脈流入部にかけて脾静脈内腫瘍栓が疑われたが,肝転移は認めなかった.以上から脾静脈腫瘍栓を伴う進行胃癌 cT4aN3aM1(OTH) cStageⅣと診断した.
十分なインフォームドコンセントを行い,手術の方針となった.
手術では審査腹腔鏡にて腹膜播種を認めず,根治切除の方針となった.腫瘍は胃体上中部小弯中心に存在し明らかな漿膜浸潤を伴っていた.左胃静脈から脾静脈,門脈合流部まで腫瘍栓を認め,膵体部への浸潤も疑われたため,胃全摘+脾摘+膵体尾部切除,門脈合併切除再建を施行した.
病理組織学的所見:UM Less-Ant/Post, 94x88mm, tub2+pap, INFb, pT4b(si,pancreas), ly1, v3, pPM0(13mm), pDM0(53mm)pT4bN2M1(OTH),pStageⅣ
術後は合併症認めず,術後12日目に退院となった.補助化学療法として術後36日目よりSOX療法を行ったが,CTCAEでgrade3の食欲不振とgrade1の下痢が出現し2コースで中止となった.手術から8ヶ月間,腫瘍マーカーはCEA,CA19-9ともに基準値範囲内を推移し無再発生存中である.
【考察】
胃癌において門脈静脈系に腫瘍栓を合併する頻度は稀であり,その根治切除症例の報告はさらに少ない.胃癌治療ガイドラインでは遠隔転移のない門脈静脈系に腫瘍栓を伴う胃癌に対し明記された治療法はcStageⅣとして化学療法が推奨されているのみである.十分なインフォームドコンセントを行ったうえで化学療法,手術を含めた集学的治療を行うのが妥当と考えられる.
本症例は,根治切除を施行し得たが,長期生存が期待されると同時に,再発の可能性も十分にあり,厳重な経過観察が必要である.
【結語】
脾静脈腫瘍栓を伴ったcStageⅣの胃癌の根治切除を経験した.
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