演題

術前S-1+CDDP投与にて胃癌穿孔をきたし二期的に根治切除しえた進行胃癌の1例

[演者] 全 有美:1
[著者] 貝田 佐知子:1, 竹林 克士:1, 大竹 玲子:1, 山口 剛:1, 村田 聡:1, 三宅 亨:1, 園田 寛道:1, 清水 智治:1, 谷 眞至:1
1:滋賀医科大学附属病院 消化器外科

【緒言】本邦の胃癌全体に占める胃癌穿孔症例の割合は1%以下とまれであると報告されており,中でも化学療法中の胃癌穿孔の報告は少なく,その治療法に関しては一定の見解が得られていない.【症例】70歳代男性.主訴は腹痛.上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎側に潰瘍を伴う40mm大の進行胃癌(type3,tub2)を指摘された.腹部造影CT検査では胃前庭部小彎の壁肥厚,リンパ節(#6,8a,14v)腫大を認め,臨床病期はT3N2M0 cStageIIIAであった.【治療経過】#8aリンパ節が長径3cm以上であり,Bulky N2転移陽性症例と診断し,術前化学療法としてS-1(60mg/m2)+CDDP(60mg/m2)療法2コース後にD2リンパ節郭清を伴う胃切除術を予定した.化学療法1コース13日目に急激な心窩部痛を認め,造影CTにて胃小弯後壁の菲薄化,腹腔内遊離ガス,腹水を認め,胃癌穿孔および汎発性腹膜炎の診断で緊急手術の方針となった.腹腔鏡で腹腔内を観察したところ,大きな癒着はなく,胃前庭部小弯から後壁にかけて約2.5cm大の円状の穿孔部を認め,汎発性腹膜炎を呈していた.腹腔鏡下穿孔部縫合閉鎖・大網被覆術を行い,腹腔内を洗浄して手術終了とした.炎症反応の陰性化した,初回手術後16日目に開腹幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清,B-I法再建術を行った.開腹時に腹水は認めず,癒着は軽度であった.ypT2N2(bulky)M0 ypStageⅡB,組織学的効果判定はGrade 1bであり,術後は補助化学療法を予定している.【考察】進行胃癌に対する術前化学療法は有効との報告もあるが,本症例のような潰瘍を呈する大型胃癌の場合には,化学療法奏効により胃癌が穿孔するリスクも念頭におきながら治療することが必要である.化学療法中の胃癌穿孔に対する手術においては,穿孔性腹膜炎を呈していること,進行胃癌であること,免疫能の低下状態であること,化学療法による凝固・止血機能異常や過凝固状態であることなどが周術期リスクとして挙げられる.本症例の経験から,腹腔鏡で穿孔部閉鎖を行い,感染をコントロールした後,二期的に根治切除を行うことは,比較的安全な治療方法と思われた.【結語】今回われわれは,術前化学療法中に胃癌穿孔をきたしたが,腹腔鏡手術にて腹膜炎をコントロールし,その後二期的に根治切除しえた1例を経験したので報告する.
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