演題

癌特異的な免疫監視機構の構築により良好な経過を得ているstageⅣ胃癌の1例

[演者] 川元 真:1,2
[著者] 森崎 隆:3, 許斐 裕之:4, 中村 雅史:1, 大西 秀哉:2
1:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学, 2:九州大学大学院 腫瘍制御学, 3:福岡がん総合クリニック, 4:浜の町病院 外科

【緒言】
StageⅣ胃癌に対する明確な治療方針は存在しない. 今回我々は切除不能なstageⅣ胃癌に対し化学療法, 免疫療法, 手術を含む集学的治療により良好な経過を得たので報告する.
【症例】
74歳男性. 左頚部腫瘤, 体重減少, 発熱を主訴に当院受診となった. 精査の結果, Virchowリンパ節転移などの切除不能な多発転移を伴う胃癌T4aN3bM1, stageⅣの診断となる. 病勢の急速な進行を考慮し, S-1/CDDPを開始した. 1ヶ月後に病変の縮小傾向を確認し, 月1回の活性化リンパ球 (Cytokine Activated Killer cell: CAK) 療法を併用した. 化療に伴うGrade3の食欲低下を認めたためS-1/CDDP4クール施行後にweekly paclitaxelへ変更した. 2年間の抗癌剤とCAK併用療法後に胃以外の病変はCTやPETで描出できなくなる程までに縮小した. 胃病変の縮小効果が乏しくなった時点で局所コントロール目的に手術を行う方針とし, 腹腔鏡補助下胃全摘術, D1+郭清, Roux-en-Y再建術を行った. 切除標本では癌局所に壊死所見とCD3+リンパ球の浸潤を認め, 郭清したリンパ節には多くの泡沫細胞を認めた. 術後補助療法として1年間の化学療法 (paclitaxel, S-1) と5年間の自家腫瘍を用いた樹状細胞ワクチン刺激活性化リンパ球(Tumor lysate-pulsed Dendritic cell Activated Killer cell: T-DAK) 療法の併用を行い, 現在5年6ヶ月間無再発生存中である.
【考察】
化学療法は急性期の腫瘍縮小に対し有効であるが, 長期的な抗腫瘍効果を期待するには免疫監視機構の構築が不可欠である. 腫瘍組織浸潤リンパ球 (Tumor Infiltrating Lymphocyte: TIL)は腫瘍微小環境内において抗腫瘍効果を示し予後に影響を与えると考えられる. 本症例で認めた癌局所のCD3+TILが抗腫瘍効果の一端をもたらしたと考えられる. 自家腫瘍を用いたT-DAKは腫瘍特異的T細胞 (Cytotoxic T Lymphocyte: CTL) を含む活性化リンパ球のヘテロ集団であり, 近年活性化リンパ球療法は化学療法や放射線療法の効果を増強させるとの報告もある. 本症例では多発転移巣の切除を行っていないにもかかわらず化療後に無再発生存が得られているのは, T-DAK療法により癌特異的な免疫監視機構が構築できたためと推察される.
【結語】
免疫療法は, 免疫監視機構の構築による長期的な抗腫瘍効果が期待でき, stageⅣ胃癌に対する集学的治療において有用な選択肢であると考える. これまでの我々の知見を踏まえ報告する.
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