演題

SY12-3

Transplant Oncology:臓器移植で用いられる手術手技の高度進行がんへの応用

[演者] 日比 泰造:1
[著者] 篠田 昌宏:1, 板野 理:1, 北郷 実:1, 阿部 雄太:1, 八木 洋:1, 松原 健太郎:1, 尾原 秀明:1, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科

序論:脳死下の腹部臓器摘出を含む臓器移植の手術手技と,腫瘍外科の"no-touch isolation"で代表される原則を融合させた"Transplant Oncology"の概念実証を試みるべく,腹部の高度進行がんに対し安全に拡大手術を施行し得た3例を報告する.
症例1:69歳女性,後腹膜の巨大な脂肪肉腫再発.まず左腋窩ー両側大腿動脈ダブルバイパスを造設後に開腹.多臓器移植の際の臓器摘出手技を応用し腹腔内臓器の亜完全脱転を行なった後,腫瘍が浸潤・近接した膵頭十二指腸・右半結腸・右腎・下大静脈・腎下部腹部大動脈合併切除を施行.症例2:36歳男性,他院で膵頭部の非機能性神経内分泌腫瘍(G2)に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行後6ヶ月,CTで上腸間膜静脈と門脈本幹にふたつの腫瘍栓と上腸間膜動脈から分岐する右肝動脈周囲に軟部陰影を認めた.門脈血栓を伴う肝移植時と同様,門脈-体循環バイパスとして回結腸静脈と右精巣静脈の間にカテーテルを留置,術中腸管うっ血の予防とした.右大腿静脈から約20cmの静脈グラフトを採取した後,上腸間膜静脈のJ1合流部近傍から肝門部の門脈本幹までen blocに切除(R0),静脈グラフト間置で再建.右肝動脈周囲を再郭清した影響で術後に仮性動脈瘤破裂が生じたがIVRで止血し得た.症例3:45歳女性,Spiegel葉原発の巨大なfollicular dendritic cell sarcoma.強く圧排されていた胃,膵,肝門部は腫瘍から安全に剥離しえ門脈-体循環バイパスは不要となるも門脈臍部と中肝静脈は腫瘍による浸潤あり.残肝側の肝門板の損傷を防ぐべく,生体ドナー肝切除と同様に左グリソンを慎重に一括確保.拡大左肝・尾状葉切除を施行.重篤な合併症は症例2のみで全例生存し3者とも術前と同様の生活を取り戻した.
結論:"Transplant Oncology"は自家・同種移植を含む高侵襲手技によるがんの治療および研究と定義づけられる.この概念の核をなすのは1.臓器移植の手術手技を今回の3症例のごとく非移植手術やex vivo切除,ante-situm肝切除,小腸・多臓器の自家移植などに応用,2.米国Mayo Clinicが先駆けとなった肝門部胆管癌に対する化学放射線療法後の肝移植に代表されるがんに対する究極の集学的治療,3.腫瘍免疫と移植免疫の架け橋の3つである."Transplant Oncology"により外科学の新たな地平線が切り拓かれた.
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