演題

SY12-2

血行再建手技の肝胆膵癌手術への応用

[演者] 高 済峯:1
[著者] 切畑屋 友希:1, 定光 ともみ:1, 富田 理子:1, 竹井 健:1, 中多 靖幸:1, 松阪 正訓:2, 向川 智英:1, 石川 博文:1, 渡辺 明彦:1
1:奈良県総合医療センター 外科, 2:奈良県総合医療センター 救急科

主要血管への浸潤を伴うことの多い肝胆膵癌切除においては,血行再建手技が手術適応,安全性,根治性に大きく影響するが,一般の消化器外科のトレーニングにおいて,血行再建手技に習熟する機会は限られている.肝移植は肝静脈,門脈,肝動脈の血行再建を伴う手術であり,そこで培われたアイデアと血管の取り扱い方法は一般の肝胆膵癌手術に広く応用可能である.実際の応用例の手技とその意義について供覧する.【肝癌症例】①下大静脈(IVC)浸潤を伴う20cm超の大型肝細胞癌.肝部IVCのクロスクランプ下に浸潤部の合併切除再建を伴う拡大右葉切除.②右肝静脈からIVC右壁に広範に浸潤する肝転移.Piggyback手術を応用した手技で残肝左葉の静脈灌流を確保するように斜めにIVCを遮断して合併切除し下腸間膜静脈(IMV)パッチグラフトを用いて血行再建.③右葉の肝転移で中左肝静脈共通幹への浸潤を伴う.全肝血行遮断(THVE)のもと拡大肝右葉切除と残肝の左肝静脈をIMV patch graftで再建.肝上部IVCのクランプの架けかえでTHVE時間短縮を工夫.④右,中,左肝静脈すべてに浸潤を伴う肝転移.拡大右葉切除と中左肝静脈の合併切除後に残肝の左肝静脈を外腸骨静脈の間置グラフトで再建.【胆管癌症例】⑤左側優位の肝門部胆管癌で右肝動脈浸潤有り.門脈右肝動脈合併切除を伴う左葉切除後に,浸潤のない左肝動脈を残肝の右動脈にコンバートして血行再建.【膵癌症例】⑥総肝動脈―固有肝動脈浸潤例.動脈合併切除後に,肝動脈を,自家大伏在静脈間置グラフトで再建.同様の手術を6例に施行.⑦膵下縁に限局した上腸間膜動脈(SMA)浸潤例.同部の合併切除を伴う膵頭十二指腸切除.後胃動脈分岐部を温存して膵尾部の血行を保ちつつ脾動脈をSMAにコンバートして吻合し血行再建.【結果】血行再建は,マイクロ下の動脈再建を含めすべて外科医が行い,血行再建に伴う合併症なし.全例,Clavien-Dindo III以上の合併症をきたすことなく,2か月以内に退院し日常生活に復帰した.長期生存も得られている.【結語】肝移植で培われた血行再建手技は,一般の肝胆膵癌手術に広く応用可能である.肝移植の専門家にならなくとも,肝癌のみならず胆道癌,膵癌の手術において極めて有用な技量となるため,是非経験すべきである.手技を肝移植の領域にとどめることなく,広く応用する意識を持ち,それを示すことが肝移植に取り組む外科医の増加にもつながると思われる.
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