演題

骨盤内巨大solitary fibrous tumorに対する経肛門的鏡視下操作併施骨盤内臓全摘術の経験

[演者] 冨田 明宏:1
[著者] 上原 圭介:1, 相場 利貞:1, 向井 俊貴:1, 江畑 智希:1, 横山 幸浩:1, 伊神 剛:1, 菅原 元:1, 深谷 昌秀:1, 梛野 正人:1
1:名古屋大学附属病院 消化器外科一

骨盤内臓全摘術は骨盤内腫瘍に対する拡大術式であり,難易度の高い手術である.骨盤内臓全摘術を要する疾患の多くは,他臓器に浸潤する巨大な腫瘍や骨盤壁に固定された腫瘍であり,腫瘍の「背側」の視野がとれず,術操作にも難渋する.経腹的腹腔鏡アプローチにおいても,骨盤腔の大部分を占拠するような巨大腫瘍に対しては,極めて狭い腫瘍の背側で内腸骨血管や骨盤神経叢の切離は難易度が高い.
一方,近年括約筋間直腸切除術(ISR)などに対して,経肛門的全直腸間膜切除術(Transanal total mesorectal excision;Ta-TME)が普及しつつある.Ta-TMEは自然開口部(natural orifice)を利用する手術の発展型として考案されたが,その本質は,経腹的操作では遠くなってしまう骨盤深部の術操作を近くで行うことである.
今回我々は,骨盤内を広く占拠する巨大腫瘍に対する骨盤内臓全摘術において,Ta-TMEの発想を応用した経肛門的鏡視下操作を併施し,安全に切除することができたので報告する.
症例は37歳,男性.頻尿と肛門痛を主訴に,骨盤内巨大腫瘤を発見され,近医経由で当院を紹介受診した.造影CT検査では,骨盤内を占拠する139×85×135mm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.腫瘤は不均一に造影され,一部には壊死を示唆する所見も認めた.MRI検査も施行したが,周囲臓器への浸潤所見は認めなかった.GISTを強く疑い,CTガイド下生検を施行したところ免疫組織染色にてCD34弱陽性,bcl-2弱陽性,STAT6陽性であり,solitary fibrous tumor(SFT)と診断した.
SFTは間葉系細胞由来の紡錘形細胞腫瘍であり,外科的な完全切除が治療の第一選択となる.他臓器浸潤を積極的に疑う所見は認めなかったが,巨大腫瘍で切除マージンを確保するために骨盤内臓全摘術が必要であった.手術では経肛門的鏡視下操作を先行し,腫瘍背側の授動のみならず,巨大腫瘍で最も困難な内腸骨血管系および骨盤神経叢の処理も可及的に施行することで,続く開腹骨盤操作で比較的容易に経肛門剥離層とつなげることで可能であった.
経肛門的鏡視下操作併施骨盤内手術は,Ta-TME以外にも骨盤内臓全摘術を含めた様々な手術への応用の可能性も秘めた有用な戦略となり得ると考える.
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