演題

当院における下部進行直腸癌に対する術前治療の変遷と治療成績の比較,今後の治療

[演者] 長谷川 芙美:1
[著者] 宮倉 安幸:1, 辻仲 眞康:1, 菊川 利奈:1, 石川 英樹:1, 齊藤 正昭:1, 清崎 浩一:1, 野田 弘志:1, 力山 敏樹:1
1:自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科

【はじめに】当院では下部進行直腸癌に対して,1994年から術前放射線療法(45-50Gy),2005年より術前化学放射線療法(40Gy,5FUlLV),2014年からは総放射線線量を45Gyにあげ施行している.今回我々は,その治療成績の比較検討,今後の治療について検討を行った.
【対象と方法】術前放射線療法を施行した50例(RT群),術前化学放射線療法のうち40Gy照射した51例(CRT40群),45Gy照射した32例(CRT45群)を対象に,治療完遂率,有害事象,周術期への影響,組織学的治療効果,遠隔成績について後方視的に検討した.
【結果】1)治療完遂率:RT群98%,CRT40群67%(化学療法継続率 67%,放射線療法継続率98%),CRT45群84%(化学療法継続率 84%,放射線療法継続率97%)であった.3群ともPD症例はなく,全例で根治手術施行可能であった.2)有害事象:Grade3以上の発生はRT群4例(8%),CRT40群6例(12%),CRT45群6例(19%)に認めた.Grade2以上の血液毒性はCRT群で有意に多く,放射線性腸炎や下痢がCRT45群で多い傾向にあった.3)術式:RT群,CRT40群,CRT45群でそれぞれ,LAR18例,38例(ISR 16例),16例(ISR1例),APR32例,11例,16例,TC0例,2例,1例であり,主な術後合併症に差はなかった.4)組織学的治効果:pCRは,RT群4例(8%),CRT40群5例(10%),CRT45群6例(18.8%)であり,有意差はなかった(p=0.36).RT群では,Grade 0を5例に認めたが,CRT群にはなかった.5)遠隔成績:pCR症例では再発を認めなかった.再発例はRT群で19例,CRT40群で16例であり,そのうち遠隔転移はそれぞれ18例,10例で認めており,RT群では遠隔転移が多い傾向にあった. RT群,CRT40群の5年無再発生存率はそれぞれ64%,67%(p=0.65),5年生存率は74%,80%で有意差を認めなかった(p=0.32).しかし組織学的効果別にみると,5年無再発生存率,5年生存率ともに治療効果の高かった症例で有意によい結果だった.
【結語】CRTでは血液毒性や放射線性腸炎に注意が必要であるが,RTと比較し術後合併症を増加させることはなく,奏効率の向上と遠隔転移率の低下により治療成績を改善する可能性があると考えられた.また,放射線照射線量をあげても,主な合併症は変わらなかったが,治療効果がよくなる傾向にあり,今後は45Gyの放射線照射とTS-1内服による外来通院での術前化学放射線療法を導入し,これまでの治療効果と比較していく予定である.
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