演題

当科における局所進行下部直腸癌に対する治療戦略とその成績

[演者] 太田 竜:1
[著者] 富澤 悠貴:1, 左近 龍太:1, 井上 貴博:1, 佐藤 俊:1, 小根山 正貴:1, 網木 学:1, 成田 和広:1, 後藤 学:1, 山崎 将人:1
1:川崎幸病院 消化器病センター外科

【はじめに】欧米における進行下部直腸癌の治療は,術前化学放射線療法(CRT)+直腸間膜切除(TME)が標準となっている.本邦では最近,TMEと側方リンパ節郭清が標準術式であることが報告された.しかし局所進行下部直腸癌に対しては,局所制御や切除率向上の目的に術前CRTや術前化学療法(NAC)が試みられているがその治療方針は明確化されていない.【目的】当科で切除を行った局所進行下部直腸癌症例において,術前療法施行例と非施行例で層別化を行い,その治療成績より適確な治療方針を明確化することを目的とした.【対象と方法】2006年4月以降,当科で原発巣切除を行った局所進行下部直腸癌を対象とした.局所進行下部直腸癌の定義として,cT4以深,cN3,CRM陽性が予想される症例とした.術前療法施行例をPT群,非施行例をSA群とし,その患者背景,手術成績,臨床病理学的因子および予後について比較検討した.【結果】直腸癌切除症例は308例あり,そのうち対象となる症例は61例であった.SA群39例(64%),PT群22例(36%)であり,性別,年齢,BMI等,患者背景に差は認められなかった.術前画像診断による深達度は,PT群でcT4bの割合が多かった.PT群のうちCRTが16例,NACが5例に行われていた.手術成績については,括約筋温存率はSA群59%,PT群46%であった.側方リンパ節郭清はSA群21%,PT群64%に施行されていた.手術時間,リンパ節郭清個数,術後合併症,術後在院日数は両群間で有意差は認めなかったが,出血量はSA群で有意に少量であった.臨床病理学的因子について,切除標本の深達度はSA群で全例pT3以深であったが,PT群では14例がdown stageしてypT2以浅となっていた.CRM陽性例は両群で認めなかった.PT群2例で病変遺残を認めずpCR率は10%であった.予後については,無再発生存率,局所再発率に差は認めず,全生存率は有意差ないもののPT群で良好な傾向であった.【まとめ】局所進行下部直腸癌の治療において,術前補助療法を行うことはdown stageによるCRM確保が可能となり,さらには生存期間延長に寄与することが予想された.
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