演題

直腸癌に対するtaTMEの成績とThiel法によるcadaverを用いたsurgical training system

[演者] 竹政 伊知朗:1
[著者] 古畑 智久:1, 沖田 憲司:1, 西舘 敏彦:1, 植木 知身:1, 秋月 恵美:1
1:札幌医科大学医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座

【背景】
直腸癌手術には,total mesorectal resection (TME)を遵守し,distant resected margin (DRM), circumferential resected margin (CRM)を確保した根治性に加え,機能温存と低侵襲性が求められている.最近では腹腔鏡下手術の普及がすすみ,COREAN, COLOR II trialでは,直腸癌に対する腹腔鏡手術の安全性とfeasibilityが示された.一方,米国の癌登録OSTRiChではStageが高くなるにつれpositive CRM rateが20%程度まで上昇することが示され,さらに最近の2つのRCT (ALaCaRT, ACOSOG Z6051)ではTME遵守, CRM<1mmを主要評価項目とした腹腔鏡手術の開腹手術に対する非劣性は証明されなかった.特に男性,狭骨盤,肥満症例などでは,肛門温存を目的とした下部直腸の剥離授動操作の難易度は高く,直線的で自由度の少ない通常の腹腔鏡機器を用いた操作には限界がある.経肛門的にTMEを施行するtaTME(transanal TME)は2010年に初めて報告され,これらの問題点に対処できる方法として注目を集めている.
【方法】
当科ではThiel法によるcadaverを用いたsurgical training systemを解剖学教室と共同開発し,taTME
の安全な臨床導入に活用している.実際の手技では,ISRの手技に準じて経肛門的に直腸を全層切除後に単孔式デバイスを肛門に装着し,腹腔鏡を用いた良好な視野で,腹側からではアプローチしにくい深部骨盤操作をまず最初に行なう.直腸後方より授動を開始し,側方で自律神経を温存し,最後に直腸尿道筋(男性),肛門縦走筋(女性)を切離して直腸前壁を剥離授動する.
【成績】
これまでに肛門温存を目的とした下部直腸癌症例に対して,taTMEを75例に施行した.Preclinicalなcadaver trainingによって局所解剖の理解が向上し,ラーンニングカーブが軽減された.経肛門操作の手術時間,出血量は中央値で87分,10gであった.TME完遂率は96%,distal marginの中央値は1.9cm,conversion例は認めなかった.1例に縫合不全を認めたが保存的に回復し,懸念される尿道損傷は認めていない.
【結論】
当科でのtaTMEの短期成績は良好であったが,taTMEには未だ解剖学的なメルクマークに不明瞭な点や技術的なピットフォールが多々あるため,段階的な技術的トレーニングの上,慎重な導入が重要である.本セッションでは直腸癌に対するtaTMEの当科の取り組みを紹介する.
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