演題

腹腔鏡下ISRにおいて腹腔側からのperineal bodyの切離は可能か?

[演者] 戸田 重夫:1
[著者] 的場 周一郎:1, 黒柳 洋弥:1, 平松 康輔:1, 岡崎 直人:1, 建 智博:1, 富沢 賢治:1, 花岡 裕:1, 森山 仁:1
1:虎の門病院 消化器外科

【背景】 腹腔鏡下手術の機器や手技の進歩により,肛門管周囲の外科解剖の理解が進んだ.当院の腹腔鏡下ISRは肛門管外科解剖に基づき,通常可能な限り腹腔側から剥離を行う.その手技と成績を明らかにする.
【方法】骨盤底の直腸左右背側で肛門挙筋の筋束を露出して肛門管内へ剥離を進める.直腸背側正中では直腸縦走筋から連なる平滑筋が直腸を横紋筋に固定し,いわゆるhiatal ligamentを形成する.直腸損傷の回避および剥離断端確保のためhiatal ligamentはできるだけ背側で切離する.予め左右背側で肛門管内剥離を行うと立体感が出てhiatal ligamentを切離しやすい.神経血管束との剥離を前側方から前方に進める.前方では前立腺背側を越えると直腸壁から腹側に縦走する平滑筋組織を認め,可及的に切離する.これが会陰小体(perineal body)もしくは直腸尿道筋と呼ばれる組織と考えている.狭骨盤の男性では技術的に困難であるが,肛門挙筋を両側で前側方まで露出すると前方の会陰小体を立体的に認識でき,切離可能となる.会陰操作では断端距離が十分であれば歯状線から剥離を開始する.後壁ではすぐに腹腔側からの剥離部と通じ,全周に剥離をつなげ,剥離を終了する.結腸肛門吻合は血流が良好であることを確認した上で,手縫い16~20針で行い,全例に一時的回腸人工肛門を造設する.
【結果】2010年4月から2016年6月に下部直腸癌又は肛門管癌に対する根治度A腹腔鏡下ISRを77例施行した.年齢中央値は62歳,性別は女性26例 男性51例.術前放射線治療を48例に施行.側方郭清は20例に施行(片側19例,両側1例).手術時間と出血量の中央値は366分,50mlであった.合併症は縫合不全0例イレウス1例 下肢静脈血栓症1例であった.全例人工肛門閉鎖可能であった.再発は全例で11例あり,局所5例(3例側方リンパ節,1例吻合部:切除可能 1例仙骨前:非切除),遠隔8例(5例切除可能)であった.観察期間中央値は42か月であった.
【結語】当院の肛門管外科解剖に基づく腹腔鏡下ISRは安全に施行可能で,長期成績も妥当と考えられる.
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