演題

下部直腸癌に対する肛門温存手術(ISR)におけるcircumferential resection margin (CRM)確保の工夫

[演者] 小森 康司:1
[著者] 木下 敬史:1, 大城 泰平:1, 伊藤 誠二:1, 安部 哲也:1, 千田 嘉毅:1, 三澤 一成:1, 伊藤 友一:1, 植村 則久:1, 清水 泰博:1
1:愛知県がんセンター中央病院 消化器外科

【背景】
過去に自施設のデータを用いて「括約筋切除を伴う肛門温存術」(Intersphincteric Resection:ISR)ではDistal margin(DM),Radial margin(RM)を充分確保することが局所再発を抑制できることを英語論文発表した.5年局所無再発生存率において,RM≧2 mmかつDM≧1.5 cmの症例:100%であるのに対し,RM<2 mmかつDM<1.5 cmの症例:42.5%(p=0.002)であった.(Komori K et al. Necessary circumferential resection margins to prevent rectal cancer relapse after abdomino-peranal (intersphincteric) resection. Langenbeck's Archives of Surgery 2016; 401(2), 189-194.)
【目的】
DM,RMを充分確保するISRの手術手技について検討する.
【手術手技】
I. 腹腔内操作
(1)腹側では,Dennonvillier筋膜を切開し,切除側に付ける層で剥離し,前立腺背側,膣後壁を露出させる.
(2)背側では,hiatal ligamentを切離し,endopelvic fasciaを切除側に付ける層で肛門側へ剥離を進める.
(3)両外側から必ず連合縦走筋を視認し,内外肛門括約筋間内の尾側方向へ剥離を進める.
II. 会陰操作
(1)ローンスター リトラクターシステムを用いて肛門を広げ,充分な視野を確保する.
(2)メジャーを使用して可能な限り正確にDMを決める.
(3)腸管壁切開は易出血性であり,止血効果を上げるため,先の細い電気メス(ニードルタイプ)を使用し,極力出血させないようにする.
(4)充分な剥離面を確保するため,切離ラインは腸管壁および内肛門括約筋を垂直方向に切開を加え,外肛門括約筋を必ず視認しながら,肛門が閉鎖できる位置まで剥離を進める.
(5)巾着縫合にて閉鎖し,E式開肛器をかけ,さらに視野を確保する.
(6)腫瘍背側は充分なRM確保するために外肛門括約筋の表面を確実に視認できる層で剥離する.
(7)腹腔内に連続させ,腫瘍を摘出する.
(8)DM,RM術中迅速病理検査を提出し,癌組織陰性を確認する.DM,RM術中迅速病理検査で癌組織陽性の場合は腹会陰式直腸切断術(APR)に術式を変更する.
(9)ポビドンヨード入り生理食塩水1000mlで洗浄する.
III. 吻合操作
(1)術後の肛門皮膚を痛み刺激を減少させるため合成糸のPDSではなく,編み糸のバイクリル糸を用いる.
(2)4-0バイクリル糸を用い,外肛門括約筋にも一部糸がかかるように刺通させ,マットレスで吻合する.
【結語】
ISR手術はCRMを十分に確保しつつ慎重に行う必要がある.
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