演題

PK1-7

活性化脂肪組織由来幹細胞が作るコラーゲンマトリックスと膵癌浸潤への影響

[演者] 奥村 隆志:1
[著者] 大内田 研宙:1, 武居 晋:1, 森山 大樹:1, 仲田 興平:1, 宮坂 義浩:1, 大塚 隆生:1, 永井 英司:1, 水元 一博:1, 中村 雅史:1
1:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学

【背景】
膵癌の病理学的特徴の一つである腫瘍内の過剰な線維化(desmoplasia)は,膵癌の悪性度に関与していることが知られている.また,最近の基礎研究においてobese mouseに発生する膵癌はlean mouseのものと比較して腫瘍径が増大し,腫瘍内線維化が亢進していることが報告され,脂肪組織が膵癌の進展に促進的な役割を担っていることが示された.しかし,膵外浸潤における膵周囲脂肪組織の線維化の機序やその責任細胞は明らかにされていない.
【目的】
脂肪組織内に存在する脂肪組織由来幹細胞(Adipose tissue derived stem cell ; ASC)に着目し,ASCが構築する間質組織の質的評価や膵癌細胞の遊走・浸潤に及ぼす影響を検討する.
【方法】
ヒトの膵癌切除組織から癌関連線維芽細胞(Cancer associated fibroblast; CAF)とASCを初代培養・樹立し,qRT-PCRおよびWestern blottingでαSMAや細胞外基質の発現変動を解析した.培養環境下でCAFとASCが作るコラーゲンマトリックスの質的な評価を行った.また,In vitroでASCが膵癌細胞の遊走・浸潤に及ぼす影響を解析した.
【結果】
樹立したASCはCAFと比較してαSMAの発現が低かった.ASCの作るコラーゲンマトリックスはCAFsのものより疎であったが(p<0.01),癌細胞の上清を添加することで密に変化した(p<0.01).さらに,間接共培養の実験系で活性化ASCは膵癌細胞の遊走・浸潤能を有意に亢進させた(p<0.01).マイクロアレイ解析によってASC特異的なマーカーとしてS100A4を同定した.ASCは非活性型ではS100A4を高発現していたが,活性化によってその発現は低下した.
【考察】
ASCの浸潤境界部への誘導およびその活性化は,脂肪組織線維化の促進によって癌細胞の遊走・浸潤能に影響している可能性が示唆された.ASCの活性化の抑制は,局所浸潤制御の新たな治療法に繋がる可能性がある.
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