演題

PK1-3

膵オルガノイドを用いたリアルタイムイメージングによる新たな膵癌局所微小浸潤機序の解明

[演者] 肥川 和寛:1
[著者] 大内田 研宙:1, 森山 大樹:1, 仲田 興平:1, 宮坂 義浩:1, 真鍋 達也:1, 大塚 隆生:1, 永井 英司:1, 水元 一博:1, 中村 雅史:1
1:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学

【背景・目的】局所微小浸潤は癌の進展における最初のステップであり,癌細胞が基底膜を破壊し間質組織へ浸潤すると考えられている.膵癌において我々は間質に存在する膵星細胞が癌細胞の間質浸潤を先導し促進することを報告しており,基底膜破壊にいても膵星細胞の関与が推測される.今回,我々は膵癌オルガノイドを用いて,リアルタイムイメージングで基底膜破壊から間質浸潤に至る局所微小浸潤の様子を観察し,その機序および膵星細胞が局所微小浸潤に与える影響を検討した.【方法】ヒト膵癌切除組織より分取した膵癌細胞を用いて,膵癌オルガノイドを樹立した.樹立したオルガノイドと膵星細胞をコラーゲンゲル内で3次元培養を行ない,基底膜破壊および間質浸潤の過程をタイムラプスで観察した.また定量的RT-PCR,siRNAによる抑制実験を行い基底膜破壊に関与する因子を検討した.【結果】膵癌オルガノイドは極性をもつ管状構造を呈し,ラミニンα5,コラーゲンⅣで染色される基底膜構造を有していた.コラーゲンゲル内で,膵癌オルガノイドを単培養群,膵星細胞との間接共培養および直接共培養群で浸潤様式を比較したところ,直接共培養群ではほか2群と比較して極性を失い,コラーゲンゲル内へ浸潤するオルガノイド数が有意に増加し(P<0.01),その浸潤面積も増大した(P<0.01).興味深いことに,基底膜破壊の前には膵星細胞の膵オルガノイドへの直接的なコンタクトがみられた.基底膜破壊に関与する因子のmRNAを測定したところ,ヒト膵癌細胞ではMMP2,MMP9,MT1-MMPは低発現で,TIMP2のみ高発現であり,膵星細胞と共培養においても有意な変化はみられなかった.一方,今回検討に用いた膵星細胞ではMMP9の発現はほとんどなく,MMP2,MT1-MMP,TIMP2は高発現であった.siRNAを用いてMMP2をノックダウンした膵星細胞との直接共培養ではコントロール群と比較して,コラーゲンゲル内へ浸潤するオルガノイド数は減少した.【結語】膵癌オルガノイドの基底膜破壊は膵星細胞に発現するMMP2により促進されると考えられた.膜型MMPsであるMT1-MMPはTIMP2を介してMMP2と結合し活性化することから,膵癌オルガノイドの分泌するTIMP2が,膵星細胞の細胞表面でのMMP2を活性化し,直接的なコンタクトにより基底膜破壊を促進している可能性がある.
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