演題

PK1-1

膵癌に対する過酸化水素応答性改良型ゲムシタビンを用いた新規治療法の開発

[演者] 松下 克則:1
[著者] 今野 雅允:2, 川本 弘一:1, 江口 英利:1, 土岐 祐一郎:1, 森 正樹:1, 小比賀 聡:4, 石井 秀始:3
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅱ, 2:大阪大学大学院 先進化学療法部, 3:大阪大学大学院 癌プロファイリング講座, 4:大阪大学大学院 薬学研究科

【はじめに】癌細胞内では代謝やシグナル伝達の異常があることが知られており,酸化還元状態も正常細胞のものとは異なり活性酸素(以下ROS)が上昇していることが知られている.ROSの構成要素の一つである過酸化水素は膜透過性が高く,ROSの中では比較的安定しているとされ,正常細胞より癌細胞で多く発現していることがわかっている.そのため,過酸化水素に応答して活性型となる改良型ゲムシタビンは,癌細胞により特異的に作用する可能性があり,癌細胞に対して効果的に作用しつつも非癌細胞への副作用軽減が期待できる.今回我々は,大阪大学大学院薬学研究科との共同研究で開発した過酸化水素応答性の改良型ゲムシタビンを用いた新たな膵癌治療法の開発をめざし,以下の研究を行った.
【目的】改良型ゲムシタビンが従来のゲムシタビンよりも副作用を軽減しつつ有効な抗腫瘍効果を発揮するかどうかを評価することを目的とする.
【方法】癌細胞株としてヒト膵癌細胞株MIA-PaCa2,BxPC3,PSN1を用いた.細胞増殖抑制効果はMTTアッセイで評価し,アポトーシスの評価はAnnexin V,Cleaved-PARPを用いて評価した.細胞内過酸化水素量を上昇させるため,グルコース拮抗阻害剤 2- デオキシグルコース(以下2-DG)を使用した.
【結果】まず通常型ゲムシタビンおよび改良型ゲムシタビンの細胞増殖抑制効果を比較したところ,通常型ゲムシタビンのIC50は,MIA-PaCa2,BxPC3,PSN1の順に27.3nM,5.3nM,15.3nMで,改良型ゲムシタビンでは順に199nM,20.9nM,103nMであった.次に,2-DGを膵癌細胞株に暴露し,過酸化水素濃度を上昇させつつ,細胞増殖抑制効果を認めない最大濃度を決定した.決定した濃度の2-DGの存在下で改良型ゲムシタビンを膵癌細胞株に添加した場合の抗腫瘍効果を,同濃度の改良型ゲムシタビン単独添加と比較したところ,2-DGを加えたものの方が細胞増殖抑制効果およびアポトーシスが増加することが確認された.
【考察】膵癌細胞内の過酸化水素量を上昇させることで改良型ゲムシタビンはより活性型となり,抗腫瘍効果が増強されることが確認された.今後はヌードマウスの皮下腫瘍モデルを用いて,膵癌細胞と正常細胞における過酸化水素の発現量の違いを評価した上で,改良型ゲムシタビンが通常型ゲムシタビンと同程度の抗腫瘍効果でありながらより副作用が少ないことを確認する予定である.
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