演題

PI3-5

再発形式による膵癌術後再発例の予後の差異の検討

[演者] 渡辺 秀一:1
[著者] 伴 大輔:1, 巌 康仁:1, 小野 宏晃:1, 光法 雄介:1, 松村 聡:1, 落合 高徳:1, 工藤 篤:1, 田中 真二:2, 田邉 稔:1
1:東京医科歯科大学附属病院 肝胆膵外科, 2:東京医科歯科大学大学院 分子腫瘍医学分野

【目的】膵癌は難治性癌であり,外科切除のみが唯一根治的な治療である.しかし,切除できたとしても一定の再発は避けることができず,再発時には予後は極めて悪いとされてきた.しかし,当科で治療を行った症例を検討したところ,再発後に病変が増悪せず局所にとどまり,術後長期にわたって生存する症例が一定数存在することが分かった.このような症例に共通する特徴を見出すため,今回我々は膵癌術後再発例につき臨床病理学的検討を行った.
【方法】2005年1月から2016年1月の間に東京医科歯科大学肝胆膵外科で切除を行った膵癌症例のうち,再発を認めた110症例を解析した.
【結果】再発形式に注目して単発再発群(単独で再発が見つかり半年間単発のままであるもの)と多発再発群(再発した時点もしくは6ヶ月以内に多発となったもの)の2群に分類を行ったところ,単発再発群は25例,多発再発群は85例であった.両者の無再発期間中央値は単発再発群が374日,多発再発群が225日(log-rank,p=0.282)と有意差を認めなかった.一方,全生存期間について検討を行ったところ,全生存期間中央値は限局再発群が1251日,進行再発群が515日(log-rank,p=0.004)と有意差を認め,特に単発再発群は予想以上に良好な成績であった.このような差異を原発巣から予測すべく単発再発群,多発再発群それぞれにおける原発巣の臨床病理学的因子を比較検討したが,有意な差を認める特徴的な臨床病理学的因子はなかった.
そこで,再発形式の差異を起こす原因として原発巣において転移に関わる遺伝子発現に差異があるのではないかとの仮説のもと両群につき膵癌の悪性度に関わるとされる遺伝子の発現を免疫組織学的染色にて調べたところ,SMAD4の陽性率が単発再発群で有意に高かった.[単発:18/21例(86%),多発:26/70例(34%),:p<0.01]
【結論】今回の検討では膵癌術後再発症例の予後は再発様式により影響を受けていることが分かり,単発の再発形式を来したものは予想以上に良好な予後であることが分かった.更に膵癌の代表的な遺伝子異常であるSMAD4発現消失プロフィールが両者の差異となっていることが分かった.SMAD4発現消失と再発形式の差異の関連には更なる基礎的研究が必要と考えられるが,今回の研究は原発巣における遺伝子異常により再発形式・予後を予想する試みを前進させるものと考える.
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