演題

PI3-3

膵癌における肝・肺転移形成機序の相違に関する検討

[演者] 武居 晋:1
[著者] 鄭 彪:1, 大内田 研宙:1, 森 泰寿:1, 仲田 興平:1, 宮坂 義浩:1, 大塚 隆生:1, 永井 英司:1, 中村 雅史:1
1:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学

背景・目的
膵癌は早期に転移をきたし,5年生存率4%と予後不良な疾患である.血行性転移は肝転移が最多であり,それは膵臓のdrainage veinが門脈であることが主な原因と考えられている.
一方,当科での手術症例の検討では肺転移症例は低頻度であるが肝転移症例より有意に予後が良いことから,肺転移と肝転移の形成には血流以外にも分子生物学的な違いがある可能性が考えられた.そこで,今回我々は膵癌における肝・肺転移形成機序の相違に関する検討を行った.

方法
当科で膵切除後に再発した膵癌220症例を対象に,初発の再発形式で分類し,臨床病理学的因子を検討した.また,C57BL/6マウスにGFPを導入した膵癌自然発生マウス(KPCマウス)由来の癌細胞を脾注(肝転移モデル)もしくは静注(肺転移モデル)し,各臓器を蛍光顕微鏡で直接観察することでGFP陽性の癌細胞の変化を経時的に観察した.さらに,セルソーターを用いて肝・肺における転移早期の微小環境の変化の違いを解析した.
結果
220症例の初発再発形式は,局所再発72例(33%),肝転移再発64例(29%),腹膜播種再発40例(18%),肺転移再発24例(11%),リンパ節再発14例(6%),その他6例(3%)であった.また,初発肺転移のうち肝転移を伴っていた症例は2例(8%)のみであった.さらに,生存分析では肺転移再発症例は,肝転移再発症例に比べて全生存期間・無再発生存期間・再発後生存期間のいずれも有意に良好であった.マウス転移モデルでは癌細胞を静注すると癌細胞は肺に捕捉され,脾注すると肝臓に捕捉されることが蛍光顕微鏡を用いて確認できた.経時的に観察を行うと肝臓では2-3週以降に肉眼的転移を形成したが,肺では10日目以降はGFP陽性の癌細胞は確認できなかった.セルソーターを用いた解析では,膵癌細胞の投与後5分,1時間で肺・肝ともCD45陽性の血球細胞の誘導がみられたが,肺ではより多くの血球が誘導された.
結論
膵癌の初発肺転移症例は肝転移症例と比較して予後がよく,肝転移を伴う初発肺転移症例は8%(2/24)と少なかった.また,今回用いたマウス膵癌細胞は肝転移を形成するものの,肺転移は形成しなかった.これらのことから,肺転移と肝転移はどちらも血行性転移ではあるが,その形成には異なる機序が関与している可能性があり,転移先での白血球の誘導がこの違いのひとつである可能性が考えられた.
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