演題

右胃大網動脈を用いた冠動脈バイパス術後の胃癌に対し経皮的冠動脈形成術後に根治的胃切除術を施行した1例

[演者] 菊池 友太:1
[著者] 牧野 浩司:1, 吉田 寛:1, 丸山 弘:1, 横山 正:1, 平方 敦史:1, 上田 純志:1, 上田 康二:1, 藤田 逸郎:2, 内田 英二:2
1:日本医科大学多摩永山病院 消化器外科・乳腺外科・一般外科, 2:日本医科大学付属病院 消化器外科

【はじめに】虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス(coronary artery bypass graft : 以下CABG)の再建血管として右胃大網動脈(right gastroepiploic artery : 以下RGEA)は早期(2ヶ月)で95%,長期(2-5年)で94%と高い開存性を有し,その長期成績の向上に伴い,今後RGEAを用いたCABG後の胃癌に対する手術症例の増加が予想される.その治療戦略においては,術前血行再建や同時血行再建,RGEA温存リンパ節郭清などの報告があり,安全性と根治性を確保できるものであることが望ましい.今回,我々はCABG後の進行胃癌症例を経験したので報告する.【症例】83歳男性.貧血,黒色便を主訴に当院受診,精査にて胃癌(M, Ant, Type3, cT3N0M0 cStageⅡA)と診断した.既往に10ヶ月前に冠動脈重症3枝病変の虚血心疾患に対しRGEAを用いたCABGを施行していた.心臓血管造影検査を施行したところ,RGEA-後下行枝グラフトの開存を認めた.右冠動脈起始部の狭窄に対し経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention : 以下PCI)を施行し,RGEAグラフトによらない血行再建を行ったうえで,2期的に開腹幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した.術中RGEAをクランプテストし心虚血性変化がないことを確認のうえ根部にて切離した.通常通り,幽門側胃切除術,D2郭清を施行し,周術期に術後および心合併症は認めず,第13病日に退院となった.術後病理所見はpT2N0M0, int, INFc, ly2, v1, CY0, pStageⅠBであり,外来通院にて補助治療せずに経過観察中である.【まとめ】RGEAグラフトの開存を認めるCABG後の胃癌手術においては,本来,心臓血管外科医待機下での手術が望ましいが,当院では心臓血管外科医が常駐しておらず,また,仮に術中グラフト損傷などにより急激な心筋虚血が生じた際は,短時間での血行再建は困難である.一方でRGEAを用いたCABG後の胃癌手術例のうち32.7%にNo. 6リンパ節転移を認めたとの報告もあり,根治性の観点からはRGEAを根部で切離するリンパ節郭清が推奨される.今回我々はRGEAを用いたCABG後の進行胃癌に対し,術前PCIにより血行再建を施行することで,安全に根治的幽門側胃切除術を施行し得た1例を経験した.若干の文献的考察を含めて報告する.
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