演題

腹臥位胸腔鏡下食道切除術における腹側剝離先行による縦隔リンパ節郭清の標準化

[演者] 七戸 俊明:1
[著者] 村上 壮一:1, 海老原 裕磨:1, 倉島 庸:1, 京極 典憲:1, 斎藤 崇宏:1, 土川 貴裕:1, 岡村 圭祐:1, 平野 聡:1
1:北海道大学大学院 消化器外科学分野Ⅱ

近年,腹臥位胸腔鏡下食道切除術(Prone)が急速に広がりつつあるが,安全な術式の普及には縦隔リンパ節郭清術の標準化が必要である.当科では腹側剥離先行の郭清術を採用しているので,その詳細と標準化のためのカダバートレーニングの概要を発表する.
【術式】完全腹臥位,4ポート(第9肋間-肩甲骨下端線;12mm,第7&第5肋間-後腋窩線;5mm,第3肋間-後腋窩線;12mm)で手術を行う.第3肋間ポートは広背筋外側縁の高い位置で挿入することで良好な可動性が得られる.当初スパイラルチューブによる両肺換気だが,手術開始時に気胸圧を一時的に12mmHg程度まで上げて完全な肺虚脱を得た後は,サクションを原則禁止し,エネルギーデバイス連動の排煙チューブは吸引せずに空気圧で開放し8-10mmHgで片肺換気を維持する.胸腔操作は腹側剥離先行とし,初めに食道を心嚢,気管・気管支から剥離する.これにより重力によって心嚢,気管・ 肺が前方に偏位し良好な視野が恒常的に得られる.各局面でも腹側剥離を先行することで食道にリンパ節がついたて状に連続したen bloc郭清が可能となる.<例: #107-109R/L; 心嚢面剥離→気管食道間剥離, #106recR; 気管食道間(右側)剥離 →右鎖骨下動脈内側剥離, #106recL;気管食道間(左側)剥離→椎前・左側縦隔剥離+食道つり上げ(2か所), #112Ao; 心嚢面 剥離→大動脈面剥離>
【カダバートレーニング】LDGを自立して実施可能な医師を対象に術式の詳細を記載したテキストを用いたレクチャーと,評価シート(10項目,8ステップ,50点満点)による客観的評価に基づく実技指導からなる教育プログラムを開始した.受講者1名がシール法固定1献体を使用し,手術操作にはエネルギーデバイスを用いた.
【結果】腹側剥離先行のProne(n=63)と以前のVATS(HATS;n=94)との比較では,出血量の減少(233ml(5-2900)vs. 840ml (120-3365); p<0.001),リンパ節郭清個数の増加(53個(13-96) vs. 40個(4-135); p<0.001),反回神経麻痺の低減(13% vs. 30%; p=0.024)が有意であった.カダバートレーニングには2名が受講し,実際の手術とほぼ同じ状況での研修が可能であった.今後,受講者の初回手術への効果を評価シートを用いて検討する予定である.
【結語】腹側剥離先行の縦隔郭清術は再現性に優れた標準化に適した術式である.また,カダバートレーニングは高度な手術手技であるProne食道切除術における縦隔郭清術の習得に有用である.
詳細検索