演題

肝機能障害を伴う同時性大腸癌肝転移に対し肝動注化学療法を先行した9例の検討

[演者] 市原 明子:1
[著者] 藤本 佳也:1, 長嵜 寿矢:1, 秋吉 高志:1, 小西 毅:1, 長山 聡:1, 福長 洋介:1, 上野 雅資:1
1:がん研有明病院

(目的)切除不能肝転移を有する大腸癌については, FOLFOX,FOLFIRIなどと分子標的薬を併用した多剤併用療法を用いた全身化学療法が適応となる.しかし,肝転移による高度の肝機能障害のため全身化学療法が困難な症例も少なからず存在する.今回,肝動注化学療法を先行し,肝機能障害の改善後に狭窄を伴う原発巣を切除,術後に全身化学療法を施行した症例を経験したので報告する. (方法)当科で肝動注を先行し原発巣を切除した症例は9例であった.平均年齢59歳(男女比8:1)で,原発部位はS状結腸癌7例,横行結腸癌1例,下行結腸癌1例であった.肝転移はH3が8例,H2が1例で,いずれも初診時に肝胆道系酵素高値(全例トランスアミナーゼ100以上,ALP1000以上6例,軽度黄疸1例)があった.Oncologic emargencyと考え,肝動注(low dose FP;5-FU+CDDP)を行った.(結果)肝動注(low dose FP;5-FU+CDDP)は1-5コース施行され, 全例で肝機能の著明な改善を認め,さらに腫瘍マーカーの低下と肝転移の縮小を認めた.肝動注に関連した合併症は認めなかった.全身化学療法に向けて,肝機能が安定した段階で,狭窄を呈する原発巣があれば切除する方針となった.肝動注後2-4週以内に原発巣の切除を腹腔鏡下に行った症例が8例,開腹が1例であった.術後は1例で軽度のSSIを認めた他合併症なく,術後の在院期間は7日-14日で平均10日であった.全例にFOLFOX,FOLFIRIとBmab,Cmab,Pmabを併用した全身化学療法を導入することができ,7例は術後1-2か月以内に開始,2例は3カ月以降に開始となった.1例は肝転移が著明に縮小し,遠隔転移の出現がなく,conversion症例となり,肝切除(R0)を施行し得た.肝動注後,1年前後の現病死が2例あるが,2年から4年未満に原病死が5例,2年以上担癌生存中が2例の結果を得た.(結語)現在,大腸癌肝転移に対する肝動注療法は,大腸癌ガイドライン2014年版で全身化学療法との比較では全生存期間に明らかな差は認められず,有用性は確立していない(エビデンス1c)として扱われているが,全身化学療法が困難なcriticalな肝機能障害を呈する症例に用いやすい点,肝転移に対する腫瘍縮小効果が高く,肝機能の改善後に原発巣切除および全身化学療法導入が可能となり,生存期間の延長にも寄与し得る点で,適応を選んで行ってもよいと思われた.
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