演題

胸腔鏡下食道癌手術における微細解剖に基づいた上縦隔リンパ節郭清

[演者] 白川 靖博:1
[著者] 河本 慧:1, 松三 雄騎:1, 前田 直見:1, 二宮 卓之:1, 田辺 俊介:1, 野間 和広:1, 西崎 正彦:1, 香川 俊輔:1, 藤原 俊義:1
1:岡山大学大学院 消化器外科学

[はじめに]われわれは2011年6月より腹臥位胸腔鏡下食道癌手術を開始し,これまでに328例の経験がある.食道癌手術において上縦隔リンパ節郭清は最も重要で最も難しい手技である.そこでわれわれは最近,胸腔鏡での拡大視効果を活用した微細解剖に基づく上縦隔リンパ節郭清の定型化を行ってきた.今回はその手技と成績を報告する.
[症例と方法]2011年6月より2016年7月の間に腹臥位胸腔鏡下食道切除術を行った300例(平均年齢:65.9歳,男性:265例,女性:35例)を対象とした.これらの症例を微細解剖に基づく定型化を行う前の240例と定型化を行った後の60例に分け,臨床的な患者背景,手術手技,成績につき検討した.
[微細解剖に基づく定型化]左右とも同様に上縦隔の層(鞘)構造と脈管の走行に注目して定型化を行っている.まず食道と気管を包む臓器鞘を周囲組織より剥離して,気管食道動脈のネットワークと反回神経周囲リンパ節群を含む脂肪織をいわゆる気管食道間膜状にする.われわれはこの間膜状の脂肪織を気管より剥離し,尾側から頭側(反回神経の中枢側から末梢側)に向かってリンパ節郭清を行うことを原則としている.その際,最初に尾側から脂肪織内へ分枝する気管支動脈の分枝を確認しクリッピングした後,切離するようにしている.この手技により余分な出血が予防でき,確実でスピーディな郭清が可能になると考えている.なお反回神経周囲では熱損傷を考慮しエネルギーデバイスは使用せず,ほぼ全ての操作を剪刀にて行っている.郭清の上縁は下甲状腺動脈からの分枝であり,同血管を確実にクリッピングした後,切離して郭清を終了する.
[結果]微細解剖に基づく上縦隔リンパ節郭清の定型化前後で患者背景に差は認めなかったが,定型化後は若手外科医の執刀する割合が増加していた.成績では,定型化術後でリンパ節郭清個数には差を認めなかった.全合併症発生率,呼吸器合併症発生率には差を認めなかったが, 20%以上であった反回神経麻痺発生率は定型化後,10%前後に落ち着いている.さらに縫合不全発生率も低下している.また,胸部操作時間は若手外科医の執刀割合が増加したにも関わらず,30分以上短縮していた.
[まとめ]拡大視効果を活用した微細解剖に基づく手技の定型化は,正確で安全,さらにスピーディな上縦隔郭清を可能とし,さらに効率的な次世代育成にも貢献していると考えられる.
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