演題

大腸癌肝転移に対する術前化学療法の安全性と有用性

[演者] 金光 聖哲:1
[著者] 植野 望:1, 吉川 卓郎:1, 田村 太一:1, 宗 慎一:1, 前田 哲生:1, 若原 智之:1, 芦谷 博史:1, 土田 忍:1, 豊川 晃弘:1
1:淀川キリスト教病院 外科

大腸癌肝転移切除例において,conversion therapy,あるいはneoadjuvant therapyとして,術前化学療法後に肝転移切除が行われるケースが増加している.一方で,化学療法が肝障害を引き起こす例も報告されている.【目的】大腸癌肝転移例に対する術前化学療法が肝切除術に与える影響について明らかとすること.【方法】2010年2月から2016年1月の間に行われた大腸癌肝転移切除例31例を対象に,術前化学療法施行群18例と術前化学療法非施行群13例に分けて,術式,手術時間,術前後の採血検査,合併症の有無,術後入院日数などについて比較検討した.【結果】術前化学療法施行群では17例(94%)にoxaliplatinが使用され,bevacizumabは7例(39%)に,抗EGFR抗体薬は7例(39%)で使用された.平均転移個数は施行群で2.7個,非施行群で1.7個と,施行群で有意に転移個数が多かった(P=0.04).また最大腫瘍径は施行群で40mm,非施行群で31mmと有意差を認めなかった.転移時期は同時性転移が施行群で14例(78%),非施行群で5例(38%)と施行群で有意に同時性転移例が多かった(P=0.03).また両葉転移は施行群で12例(67%),非施行群で4例(31%)と,施行群で有意に両葉転移例が多かった(P=0.046).葉切除以上のmajor hepatectomyは施行群のうち5例(28%)で,非施行群のうち3例(23%)で施行されており,両群間で術式に明らかな差異は認めなかった.平均手術時間は施行群で520分,非施行群で460分と有意差を認めなかった.術前のGOT,GPT,T-Bil,PT-INR値は両群間でいずれも有意差を認めず,術後のGOT,GPT,T-Bil,PT-INRのpeak値,あるいは高値の遷延などについても両群間で差異を認めなかった.術後平均在院日数は施行群で15日,非施行群で14日,また術後合併症は施行群で5例(28%),非施行群で3例(23%)といずれも有意差を認めなかった.切除後再発は施行群で9例(50%),非施行群で8例(62%)と有意差を認めなかった.肝転移切除後のDisease free survivalは,施行群で0.94年,非施行群で1.50年と有意差を認めなかった.【まとめ】両葉多発肝転移に対する術前化学療法後の肝切除は,術後在院日数の延長や合併症の増加をきたさず,安全に施行することができる.術前化学療法による長期予後の改善については明らかではなかった.
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