演題

当院における下部直腸癌に対する治療的側方郭清の成績

[演者] 佐藤 雄:1
[著者] 松永 理絵:1, 片岡 温子:1, 合田 良政:1, 秀野 泰隆:1, 矢野 秀朗:1
1:国立国際医療研究センター病院 外科

下部直腸癌のうち固有筋層を超えて浸潤する症例が側方郭清の適応とされ,JCOG0212でも直腸間膜切除術(ME)+側方郭清(LLND)に対するME単独の非劣性は検証できず,日本人の下部直腸癌ではME+LLNDが標準治療であることが支持される結果となった.当院ではこれまで,術前画像での側方リンパ節転移例に対してのみ転移陽性側のLLNDを行い,またガイドラインでの側方郭清適応例も含めて原則としてCRTや化学療法といった術前治療を適用していない.当院における側方リンパ節転移診断は,MRIで短径7mm以上,またはPET/CTでFDG集積を認めるものを転移陽性の判断基準とし,その診断能は感度75.0%,特異度80.0%,陽性的中率60.0%,精度78.6%である.1995年4月から2014年12月の間に手術施行した下部直腸癌(Rb)症例209例で,ME+LLND群64例とME群145例の短期手術成績を比較すると,手術時間(中央値)はME+LLND群で448分(232-754分),ME群で314分(139-643分)とME+LLND群で134分ほど長く(P<0.001),出血量(中央値)はME+LLND群で1074ml(60-4051ml),ME群で263ml(10-3881ml)とME+LLND群はME群の約4倍であった(P<0.001).術後合併症は,ME+LLND群で19例(29.7%),ME群で55例(37.9%)に認めた(P=0.275).特に術後排尿障害についてはME+LLND群で3例(4.7%),ME群で10例(6.9%)とLLNDに伴う増加はなかった(P=0.758).pStage II/IIIで根治度AであったME+LLND群43例とME群71例について長期治療成績を比較した.ME+LLND群における病理学的側方リンパ節転移陽性例は15例(34.9%)であった.術後化学療法は,ME+LLND群で23例(53.5%),ME群で31例(43.7%)に実施された.観察期間中央値55.9カ月で,再発はME+LLND群で11例(25.6%),ME群で15例(21.1%)に認め(P=0.648),そのうち局所再発は6例ずつで,局所再発率はそれぞれ14.0%と8.5%であった(P=0.364).一方,遠隔再発はME+LLND群で11例(25.6%),ME群で13例(18.3%)に認めた(P=0.478).特にME+LLND群において,側方リンパ節転移陰性例28例のうち再発は2例(7.1%)であったに対し,転移陽性例では15例中9例(60.0%)に認めた(P<0.001).5年無再発生存率はME+LLND群で65.1%,ME群で66.8%であった(P=0.562).術前側方リンパ節転移陽性例には術前化学療法などを考慮すべきことが示唆された.
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