演題

当院における排便様式を考慮にいれた下部直腸癌に対する術式選択の取り組み

[演者] 河内 雅年:1
[著者] 安達 智洋:1, 向井 正一朗:1, 矢野 琢也:1, 佐田 春樹:1, 田口 和浩:1, 中島 一記:1, 川堀 勝史:1,2, 惠木 浩之:1, 大段 秀樹:1
1:広島大学附属病院 消化器外科, 2:川堀病院 大腸肛門外科

【背景】下部直腸癌(Rb)の手術は術後排便様式の変化を認め,永久ストーマ造設群(Miles術)と肛門温存群(超低位前方切除術(SLAR),括約筋間直腸切除術(ISR))の2群に分類されるが,適切な術式選択には議論の余地がある.当院は後ろ向き結果を検討し術前に患者に生じ得る排便障害などを説明し,術式選択を前向きに検討してきた.
【目的】下部直腸癌における排便満足度と術後のQOLを前向き群と後向き群で比較して検討する.
【対象】
当院で下部直腸癌に対して手術を施行した前向き群19例(2014年12月~2016年1月)と後ろ向き群44例(2010年5月~2014年11月)を対象とした.
【方法】
当院独自のアンケートとQOLをEORTC QLQ-C30を用いて,前向き群と後ろ向き群で解析する.アンケートは,術式の選択基準(自分,医師,家族等),術式の選択理由,排便障害に対する満足度(医療者の説明,日常生活等)を回答選択方式と点数記入方式で行った.
【結果】全症例は63例で前向き群19例(Miles術群5例,肛門温存群:14例(SLAR:14例,ISR:0例)),後ろ向き群44例(Miles術群:20例,肛門温存群:24例(SLAR:11例,ISR:13例)).前向き群:後ろ向き群において,年齢(中央値)(63歳:67歳,P=0.103),性別(男/女=14/5:28/16,P=0.43),肛門縁から腫瘍下端までの距離(50mm:30mm,P<0.01),T因子(T0-T2/T3-T4=14/5:34/10,P=0.75),Stage(0-2/3-4=13/6:32/12,P=0.72),術前CRT(有/無=4/15:8/36,P=0.79)であった.
1)アンケートでは前向き群:後ろ向き群で,術式の選択は自分で決めた(63%:39%,P=0.01),肛門温存群で術式の選択理由は排便障害の認識がなかった(21%:45%,P=0.12)との回答であった.術後排便障害に関する医師の説明への満足度(0-100点)の中央値は(90:60,P=0.03)であった.
2)術後排便満足度は前向き群:後ろ向き群で (70:50,P=0.16), EORTC QLQ-C30(0-100点)の中央値は,Global(83.3:66.6,P=0.01), Role(100:66.6,P<0.01), Social(100:83.3,P=0.04)であった.
【考察】前向き群は,肛門縁までの距離の違いや後ろ向きの検討結果を術前に患者に説明しながら術式選択を行うことにより,ISRを選択する割合が減少し術後QOLの向上を認めた可能性がある.近年当院ではSLARで腹腔内操作時に肛門挙筋よりも肛門側に切除範囲を広げる術式に変化してきている事もISRの減少に寄与した可能性はあるが,今後更なる症例の蓄積を行い検討する予定である.
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