演題

SY08-8

術後早期回復を目指した消化器外科周術期管理を支える経腸栄養の役割

[演者] 鍋谷 圭宏:1
[著者] 星野 敢:1, 滝口 伸浩:1, 池田 篤:1, 早田 浩明:1, 外岡 亨:1, 有光 秀仁:2, 柳橋 浩男:2, 千葉 聡:2, 高山 亘:2
1:千葉県がんセンター 消化器外科(食道・胃腸外科), 2:千葉県がんセンター 消化器外科(肝胆膵外科)

近年,消化器癌手術後合併症とくに感染性合併症が長期予後不良因子になることが明らかになり,合併症が少なく術後早期回復(短期予後)に貢献する周術期管理は,生存率や術後QOL(長期予後)の向上のために必須と考えられる.ERAS®の概念を取り入れた術後早期回復プログラムでは,術前からの患者指導,リハビリ,適切な低侵襲手術,感染対策,鎮痛,早期離床,などに加えて,シームレスに腸を使った栄養管理が極めて重要なエレメントになる.一方近年では,手術手技の向上により,消化器外科手術後も早期経口摂取が注目されている.そのために,経腸栄養(EN)とくに早期ENの必要性は低くなったのだろうか?高リスク患者に対する高度侵襲手術である食道癌手術を例にとると,(1)早期に経口摂取が開始できても,質量ともに必要十分な栄養はなかなか確保できない,(2)術前からシームレスに確実に腸を使うにはENが必要,(3)低侵襲の鏡視下食道癌手術後でも,ENは術後早期の体重減少や肺炎発症を抑制する,(4)術後ENを基本とした早期回復プログラムで,IL-6やCRPなどの炎症反応が抑制される,などの事実からENの必要性・有益性は高い.即ちENは,不十分かつ不安定な術後経口摂取を補う有効な栄養投与手段であることに加えて,患者が受ける手術侵襲を低下させ,感染対策にもなると考えられる.これらの"beyond nutrition"の効果をより発揮させ術後早期回復を目指すために,シームレスなENを中心に統合化された術後早期回復プログラムがNSTなどのチーム医療で提供されることが望ましい.特に,食道癌手術など高侵襲で術後経口摂取再開に影響する合併症の頻度が高い外科治療では,画一化されたクリニカルパスを全症例に適応した管理は困難で,術前・術後・退院後と経時的に適切な栄養管理法を考え,個別的に実施・変更していく必要がある.施設の実情や体制に応じたバンドルを作るのも一手で,当院ではNSTを中心にバンドルを実践した結果,縫合不全を含むSSIは著明に減少した.とはいえ,消化器外科手術後早期回復プログラムそのものの高いエビデンスはまだ多くない.ここでは,最近の報告と共に当科の食道癌周術期栄養管理を紹介し,消化器外科手術全般に通じる術後早期回復を目指した周術期EN管理の考え方・役割を議論したい.適切なENは,術後合併症の予防と対策そして早期回復のために必要で,消化器癌手術成績の向上に貢献すると思われる.
詳細検索