演題

直腸癌の腹腔鏡手術症例における術中ICG蛍光観察による腸管血流評価の縫合不全の予測についての有用性

[演者] 岩本 博光:1
[著者] 速水 晋也:1, 堀田 司:1, 横山 省三:1, 松田 健司:1, 上野 昌樹:1, 田村 耕一:1, 渡邊 高士:1, 三谷 泰之:1, 山上 裕機:1
1:和歌山県立医科大学医学部 外科学第二教室

直腸癌の合併症として縫合不全は最も忌避すべきものである.日本の大規模StudyであるShiomiらの報告(J Am Coll Surg. 2015 Feb;220(2):186-94)では,全grade合わせた縫合不全の発生率は15.9%であった.実際これまでの直腸外科の創意工夫は縫合不全の克服のために行われてきたといっても過言ではない.同Studyでは回腸廔を造設することにより縫合不全による再手術を減らすことができると報告しており,縫合不全を事前に予測し必要な症例に対し適切な回腸廔造設を行うことが極めて重要である.近年になりindocyanine green (ICG)蛍光観察による腸管の血流評価の有用性が報告されるようになり,当科から特に腸管及び腸間膜にICG蛍光が観察されるまでの時間(T0)が有用であると報告した.今回直腸癌に対象を絞りその有用性について評価したので報告する.
《対象・方法》直腸癌に対して再建術を伴う腹腔鏡下直腸切除術を施行し,ICG蛍光観察を施行した16例を対象とした.再建までに吻合部口側と吻合部肛門側を,それぞれICG 7.5mgを静脈注射し,D-light system (Karl Stort)もしくはPINPOINT system (NOVADAQ)を用いて蛍光観察を行った.解析は浜松ホトニクス社のROIs systemを用いて蛍光を定量化し,統計解析に使用した.
《結果》症例内訳は直腸S状部(Rs)/上部直腸(Ra)/下部直腸(Rb):5/4/7であった.全例腹腔鏡手術にて完遂し,その内訳は前方切除術/低位前方切除術:5/11であり,回腸瘻造設術を8例に施行し,ドレーンを7例に留置した.低位前方切除術2例でgrade Bの縫合不全を認め,いずれも回腸瘻造設術症例であった.縫合不全群と縫合不全なし群とでは,T0は,縫合不全群でやや長い傾向を認めたが,有意差は認めなかった(27.1±9.1秒 vs 12.8±11.7秒,p=0.12).
《結語》近年になりICG蛍光観察による手術中の腸管虚血の評価の報告が増えてきた.しかしまだどの指標が術後の縫合不全を予測できるかは議論の最中である.当科はこれまでのデータから,大腸癌のT0が60秒以上では縫合不全のリスクが高いと報告してきた.今回は明らかな意差は認めなかったが,今後さらに症例を集積し,その有効性をさらに評価するとともに,ICG蛍光観察の時期や部位を再度検討し,縫合不全0を目指して行く.
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