演題

SY08-6

担癌個体における全身性炎症反応亢進の意義とそれを標的とした免疫栄養療法が腫瘍学的長期予後に及ぼす影響

[演者] 奥川 喜永:1,2
[著者] 毛利 靖彦:2, 田中 光司:1,2, 藤川 裕之:2, 廣 純一郎:2, 問山 裕二:2, 横江 毅:1, 井上 靖浩:2, 楠 正人:2, 三木 誓雄:1
1:伊賀市立上野総合市民病院 外科, 2:三重大学大学院 消化管・小児外科学

【はじめに】担癌個体の腫瘍宿主相互作用に伴う全身性炎症反応(SIR)の亢進は,免疫能低下や癌進展に深く関与すると考えられている.しかし,SIRが担癌患者の栄養状態,および術後短期および長期成績に与えるメカニズムは未だ不明な点が多く,SIRそのものを治療標的とした免疫栄養療法の臨床的意義は未だ確立されていない.今回,我々は,SIRと炎症性サイトカインとの関連を明らかにし,免疫栄養剤を用いた知見をもとに消化器癌周術期管理の展望について報告する.
【方法】我々のこれまでの研究結果を基に術前血清C-reactive protein値が0.5mg/dL以上をSIRと定義した.2つの独立したコホートにおける大腸癌症例,計686例を主たる対象とし,以下の4点について検討した.1)術前SIRと癌組織の炎症性サイトカイン(IL-1beta, IL-6)発現量および周術期の血中炎症性サイトカイン変動に与える影響 2)術前SIRと術後短期成績(術後感染性合併症発症率)との関連3) 術前SIRと腫瘍学的長期予後との関連 4)抗炎症物質であるEPAを高濃度含有する経腸栄養剤(EPA 1.0g, DHA 0.5g)を用いた免疫栄養療法が,術前,術後の周術期全身化学療法施行中に,SIRと体組成成分に与える影響および腫瘍学的長期予後に与える影響の評価.
【結果】1)SIRとサイトカインとの関連:SIR陽性症例の大腸癌組織におけるIL-1beta, IL-6の発現は,非亢進群と比較して有意に亢進しており,高度手術侵襲により術後全身性のサイトカイン反応も有意に亢進していた.2,3)SIRと術後短期長期成績との関連:SIR陽性は術後感染性合併症発症の独立危険因子であるともに,腫瘍学的予後の独立した予後不良規定因子であった.4) 周術期免疫栄養療法介入とその腫瘍学的効果:進行胃がん症例に対する術前化学療法施行中に免疫栄養療法を付加することによりSIR抑制と栄養指標の改善を認めた.さらに消化器癌術後全身化学療法では,免疫栄養療法介入群では,腫瘍進展に伴うSIR亢進が長期間抑制され,骨格筋量・除脂肪量が有意に増加し,化学療法継続性が有意に向上していた.そして予後解析ではSIR亢進例では,免疫栄養療法が有意な予後改善効果を示し,多変量解析でも免疫栄養療法の付加が独立した予後規定因子となっていた.
【結論】SIRは術後短期および長期予後と強く相関し,EPAなどの抗炎症物質を含む免疫栄養療法はSIRを制御し,有用な集学的治療の一つとなりうると考えられた.
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