演題

RS2-107-18-1

当院における膨潤手技併用腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術:現在の術式と成績

[演者] 進 誠也:1
[著者] 永川 寛徳:1, カーペンター いづみ:1, 川上 俊介:1, 岡田 和也:1, 岸川 博紀:1
1:光晴会病院 外科

背景)腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術,特に経腹腔的腹膜前修復法(以下;TAPP)の術中診断の確実性,修復範囲の視認性の良さに着目し2012年1月より鼠径部ヘルニアに対するTAPPを導入した.勤務先異動も経て2016年12月までに295症例を経験しているが,導入初期には日本ヘルニア学会の鼠径部ヘルニア分類(以下;JHS)II-3症例においてヘルニア嚢内へのメッシュ逸脱による再発や,JHS II-1症例においてJHS I-2の再発を経験した.2014年1月からは腹膜前腔剥離範囲の拡大を目指して徳村らの開発した膨潤手技併用TAPPを導入し2016年12月現在,220症例に施行した(膨潤手技併用TAPP導入後の19症例目にて日本内視鏡外科学会技術認定取得).
目的)当院における現在の膨潤手技併用TAPP症例の手術手技および臨床成績を報告する.
対象)2016年4月から2016年11月までに当院にて膨潤麻酔併用TAPPを施行した鼠径部ヘルニア100症例.再発,前立腺全摘術後症例,腹腔内癒着のある症例を含み,他術式併施症例は除外した.
方法)患者背景,手術時間,術後在院日数,術後合併症,再発の有無などの臨床的項目を比較検討する.
結果)平均年齢は65.9歳,男女比は9:1,片側両側比は6:4であった.非還納性症例5例,剥離操作を必要とする腹腔内癒着症例6例,再発症例7例,前立腺全摘術後症例2例であった.平均手術時間は全症例で101分,両側症例で125.6分,片側症例で84.3分であった.腹腔内癒着や追加操作のない比較的単純な片側症例では75.1分であった.術後在院日数は2.54日であった.術後合併症では漿液腫を11例に認めたが全て保存的に軽快した.現在まで慢性疼痛移行症例,再発症例はない.
考察)膨潤手技では腹膜・腹膜前組織の癒合状況を細かく確認しながら,膨潤液注入部位を変化させることで,安全な腹膜剥離層の同定が容易となった.腹膜の鋭的切開,腹膜前腔の剥離操作でも出血が極めて少なく,エネルギーデバイスもほとんどの症例で不要であった.特に鼠径床腹側方向では鈍的・鋭的な剥離操作が容易となり,明らかに大きなサイズのメッシュ留置が可能となった.経時的に有意な手術時間の短縮も認めた.
まとめ)膨潤手技はTAPP手技の定型化において有用である.今後は慢性疼痛や中長期的な再発の有無について観察を継続する.
詳細検索