演題

RS2-104-18-5

罹患期間の長い陰嚢型外鼠径ヘルニアに対する,安全なTAPP法手技

[演者] 田崎 達也:1
[著者] 佐々木 秀:1, 香山 茂平:1, 杉山 陽一:1, 中村 浩之:1, 上神 慎之介:1, 今村 祐司:1, 中光 篤志:1
1:JA広島総合病院 外科

【はじめに】当科では,2013年9月から2016年11月までに404症例487病変のTAPP法を経験し,再発のない,安全な術式の定型化を目標としてきた.ヘルニア門が3cm以上の大きな症例に対して再発のない手術を行うためにはインレイメッシュの使用が有用であり,視認しながら確実にメッシュを留置できる腹腔鏡手術が最も威力を発揮できる病態である.一方,幼小児期にはすでに発症していたと思われる罹患期間の長い陰嚢型外鼠径ヘルニア症例では,ヘルニア門周囲の腹膜の肥厚,瘢痕化のため病態が複雑化し,手術手技に難渋し,手術時間の延長につながることが多い.これらに対して安全に施行できる定型化術式を完成させなければ,腹腔鏡手術を行う意義はない.
【目的】罹患期間の長い陰嚢型外鼠径ヘルニア症例に対するTAPP法手技を,そのピットフォールとあわせて報告する.
【手術手技】ヘルニア嚢とヘルニア内容が高度に癒着している症例など,安全にヘルニア内容を腹腔内に還納できない症例では,鼠径部切開法に変更する.陰嚢型外鼠径ヘルニアでは,ヘルニア嚢をすべて引き抜くことは困難であり,腹腔鏡で最初に観察できるレベルでのヘルニア門に沿って,まずヘルニア嚢を環状離断することが基本である.下腹壁動静脈,精巣動静脈,精管は腹膜前筋膜深葉の腹壁側に位置するため,腹膜だけを切開すれば,損傷することはない.精管の内側の腹膜切開の際に,腹膜と腹膜前筋膜深葉を同時に切開し,早期に腹膜前腔を開放する内側アプローチを推奨する報告が多いが,罹患期間の長い症例ではヘルニア門の内側の腹膜が肥厚,瘢痕化をきたしており,同時切開は困難なことがある.そのような症例でも無理に同時に切開し,膀胱前腔を開放することに固執したことにより,変位した下腹壁動脈の損傷をきたした1例を当科で経験した.そのため,以後は,ヘルニア門の内側の腹膜が硬化をきたした症例では,腹膜切開のみにとどめておき,先に,精管の外側での腹膜前腔剥離操作を行うことにより,腹膜の可動性をよくする.その後,内側臍ひだを手前に十分牽引した後,精管内側で膀胱前腔に入るが,その際,結合組織や腹膜前筋膜を,モノポーラメッツェン一枚ずつ薄く,あわてず切るイメージで切開し,膀胱前腔を開放する方法が安全である.
【結論】罹患期間の長い陰嚢型外鼠径ヘルニアでは,「ヘルニア嚢環状離断」というTAPP法における基本手技を確実に行うことが大切である.
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