演題

SY06-10

膵断端処理の工夫による膵液瘻予防の限界と膵液キモトリプシン活性に基づく新しい膵液瘻対策の提案

[演者] 石沢 武彰:1,2
[著者] 川勝 章司:1, 井上 陽介:1, 三瀬 祥弘:1, 伊藤 寛倫:1, 高橋 祐:1, 井田 智:1, 比企 直樹:1, 國土 典宏:2, 齋浦 明夫:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科, 2:東京大学附属病院 肝・胆・膵外科

【背景】膵再建/閉鎖法の工夫により術後膵液瘻を予防する試みが続けられているが,決定的な方法は確立されていない.キモトリプシンプローブを用いた蛍光イメージングは膵液の蛋白分解酵素活性に基づいて手術中に膵液漏出部位を描出する技術であり,術後膵液瘻対策に応用できる可能性がある.
【方法】①膵空腸吻合法による術後膵液瘻予防:Soft pancreasと判断された膵頭十二指腸切除術228例を対象に,柿田変法とBlumgart変法との間で手術成績に相違があるか検討した.②キモトリプシンプローブを用いた膵液瘻対策:キモトリプシンによる加水分解を受けて可視領域の蛍光を発する新規化合物(glutaryl-phenylalanine hydroxymethyl rhodamine green, gPhe-HMRG)の患者体腔内投与を想定して非臨床安全性試験を実施した.また,ブタ体腔内または患者体外サンプル上で膵液を蛍光標識し,臨床応用の可能性を検討した.
【結果】①柿田変法 171例とBlumgart変法 57例との間で患者背景と手術因子に有意な相違を認めず,術後膵液瘻(ISGPF grade B以上)の発生率にも有意差はなかった(22% vs. 18%, P=0.503).②ICHガイドラインに従った安全性試験を実施した結果,gPhe-HMRGに毒性を認めなかった.ブタ膵体尾部切除モデルにおいて膵断端にgPhe-HMRGを散布して蛍光像を撮影すると,stapler刺入部の小孔から漏出する膵液が描出された.また,膵実質を鉗子で圧迫するだけでも蛍光輝度の上昇を認め,病理学的に同部に膵組織の脱落が確認された.上記の知見をもとに,膵体尾部切除臨床例で膵を鋭的に離断し主膵管を結紮した後,肝円索で被覆した膵断端をマットレス式に緩く3針縫縮する方法を適用したところ,これまでの4例では術後膵液瘻の発生を見ていない.現在,膵断端/吻合部のキモトリプシン活性に基づいて術後膵液瘻の発生を予測し予防的腹腔ドレーンの要否を判断するためのカットオフ値を求めるべく,患者の膵断端を転写したガーゼに体外でgPhe-HMRGを散布し,蛍光の有無とキモトリプシン活性を迅速に評価する初期検討を実施している.
【結語】術後膵液瘻の発生要因は単一ではなく,既存技術の修正のみで解決することは難しい.キモトリプシン活性に基づいた膵液の蛍光イメージングは,手技の工夫や医療機器開発に応用できるだけでなく,膵液漏出の有無と膵液の活性を症例毎に術中評価し,膵液瘻のリスクに応じた周術期管理を実現するための糸口になり得る.
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