演題

RS2-69-9-1

膣内に発育した直腸癌に対する腫瘍の散布を防止する対処法-腹腔鏡下膣全摘を伴う腹会陰式直腸切断術-

[演者] 井上 重隆:1
[著者] 本庄 由佳:1, 寺坂 壮史:1, 堤 宏介:1, 小倉 康弘:1, 山元 啓文:1, 橋爪 健太郎:1, 小島 雅之:1, 本山 健太郎:1, 中房 祐司:1
1:福岡赤十字病院 外科

【緒言】他臓器に浸潤した直腸癌は遠隔転移を伴わない場合,浸潤臓器を合併切除することにより長期予後を望める.一方膣に浸潤した直腸癌は浸潤範囲が広く膣内の腫瘍量が多い場合,膣を解放することによる腫瘍の術野への散布が問題となる.今回,膣内に充満するように浸潤発育した直腸癌に対する子宮と膣全摘を伴う腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術の手技のポイントと問題点について報告する.【手技】①腹腔操作:体位は砕石位で5ポート.両側尿管ステントを挿入.通常通り中枢側郭清し,体腔内で口側腸管を切離.下腹神経前筋膜の前の層で直腸背側,側面の剥離を行い,骨盤神経叢を温存.直腸背側の剥離は尾骨の先端付近までにとどめ腫瘍の露出を避ける.つづいて卵巣動静脈を切離し,子宮広間膜の前葉後葉を切開.子宮頸部に向かう神経血管束をvessel sealer (以下VS)で切離して直腸側腔と子宮広間膜の切開層を連続させる.子宮頸部に流入する子宮動脈と尿管を同定し,それらが交差する部位で子宮動脈を結紮切離する.子宮膀胱間は正中で血管に乏しい疎性結合織から成っており,容易に剥離できる.膣管も正中では比較的血管に乏しいが左右では壁と一体となった静脈が多数あり,出血をしやすく,VSやbipolar deviceを用いて止血しながら剥離を進める.②会陰操作:尾骨の先端付近から前方に向かい膣の側方を通過し外尿道口の後方で左右が連続する切開を加え,外尿道口以外の膣壁切除する.尾骨の前面付近で肛門挙筋を切開して腹腔と連続し,肛門挙筋,会陰横筋を切開し,腹腔内から膣壁を剥離した層に至る.膣壁と外尿道口の粘膜を切離し,腫瘍の充満した膣を袋状に保ったまま直腸子宮膣全摘術を完成させる.③腹部操作:両側側方リンパ節郭清を行い,S状結腸人工肛門を作成する.【考察】本術式は腫瘍の充満した膣壁を術野に解放することなく病変を一塊として切除できるため,腫瘍の散布を防ぐことができる.子宮動脈と尿管は子宮頸部付近で近接するため,尿管ステントが損傷防止に有用である.膣の側壁は脆弱な血管を含む組織で出血をしやすく,VSを使用しても術野が血液で汚染するのでガーゼ圧迫などの手技を適切に行いながら手技を進めることが重要である.会陰操作にあたっては,外尿道口が狭窄しない様に適切な範囲の粘膜を残すこと,尿道カテーテルを触知しつつ損傷を避けることに留意する.
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