演題

SY06-3

膵頭十二指腸切除術における膵腸吻合法~粘膜吻合法と陥入法のランダム化比較試験

[演者] 千田 嘉毅:1
[著者] 清水 泰博:1, 夏目 誠治:1, 伊藤 誠二:1, 小森 康司:1, 安部 哲也:1, 三澤 一成:1, 伊藤 友一:1, 木下 敬史:1, 植村 則久:1
1:愛知県がんセンター中央病院 消化器外科

【背景】
近年膵頭十二指腸切除術(以下PD)後膵液瘻に関しては粘膜吻合法(以下DM)での極めて良好な成績も報告されているが一般に普及しているとは言い難い.DMはsoft pancreasや膵管非拡張症例では高度な技術を要するが,陥入法(以下IV)は主膵管再建の必要がなく,むしろsoft pancreasのほうが腸管内への陥入が容易である.DMとIVはPD後のmajorな膵腸再建方法であるがその成績を比較したRCTは少ない.
【目的】
当科で計画したDMとIVのRCT(UMIN000005890)の結果を紹介する.
【対象】
2011年7月から2015年9月までに当科でPDを施行し,同意を得られた120例(DM:61例,IV:59例).
【方法】
対象は主膵管径と膵実質の硬さを調整因子としてDM群とIV群に割り付けされた.primary endpointはGrade BC膵液瘻.secondary endpointはドレーン留置期間,術後在院期間,膵空腸再建時間,再建コストとした.
【陥入法術式】
再建はChild法で膵腸吻合は端側で行う.挙上空腸漿筋層と膵断端後壁を4-0PDSで結節縫合(3-4針)を行う(後壁外列).次に空腸全層を切開し,4-0PDS両端針で膵断面のedgeと空腸全層を連続縫合する(後壁内列).膵管チューブは不完全外瘻とし,前壁も後壁と同様に2層(内列は連続,外列は結節)で縫合する.
【結果】
Grade BC膵液瘻はIV群で少ない傾向であったが有意差は無かった(DM:23.0% vs IV:10.2%,p=0.077).drain留置期間は7日 vs 6日(p=0.027),術後在院日数は24 vs 19日(p=0.015)とIV群で短かった.再建時間は両群間で差がなかった(DM:29分 vs IV:30分,p=0.077)が,再建コストはIV群がDMより安価であった(DM:9000\ vs IV:7400\,p=0.001).
soft pancreas61例(DM:31例,IV:30例)でのsubgroup解析ではGrade BC膵液瘻はIV群で有意に少なかった(DM:41.9% vs IV:10.0%, p=0.01).また,Grade BCに発展した20例のうち,IV群(6例)はDM群(14例)より有意にdrain留置期間(DM:49日 vs IV:38.5日,p=0.028)と術後在院日数(DM:54.5日 vs IV:42日,p=0.028)が短かった.
【結論】
Grade BC膵液瘻発症率においては陥入法が粘膜吻合法より少ない傾向にとどまった.drain留置期間,術後在院日数,再建コストなどでは陥入法が優れており,その有用性が示唆された.特に,膵液瘻の危険因子であるsoft pancreas症例に対して陥入法は有用と考えられた.Grade BCに発展した症例でも,陥入法は粘膜吻合法より早く治癒し,術後在院期間を短縮させる.
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