演題

RS3-118-7-6

膵臓を極力触らない膵上縁郭清における視野展開の意義

[演者] 比企 直樹:1
[著者] 大橋 学:1, 布部 創也:1, 熊谷 厚志:1, 井田 智:1, 辻浦 誠浩:1, 佐野 武:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科

【背景】胃癌手術における膵上縁郭清では膵臓を展開することで,良い視野を得るという感覚が日本の外科医にはあり,開腹手術では用手的に愛護的に膵臓を展開していた.一方,腹腔鏡下に膵臓を展開するためには硬性の高い鉗子とスポンジやガーゼなどを使用するが,これが膵臓の圧損傷(Blunt Trauma)の原因となる可能性があると考えた.近年,わが施設ではこの鏡視下の従来の展開法が術後の膵液漏の原因であるということを動物実験および臨床研究で示してきた.それらの結果より膵臓に極力触れることない膵上縁術野展開の手技を開発することとした.
【手術手技について】以前は,胃膵ヒダを助手右手で把持,助手左手で膵実質をガーゼまたは専用のスポンジ(セクレア®)を用いて圧排していた(従来法).一方,胃膵ヒダは糸付きのオーガンリトラクター®で把持し体外から牽引して助手両手での視野展開を可能とした上で,助手片手で膵下縁の腸間膜脂肪を把持して尾側に牽引する事で膵臓を触らずに展開をしている.また,膵上縁郭清時に従来は30度の硬性斜視鏡を使用していたが,現在では45度に変更することで,軟性鏡のような覗き込むような視野が得られる.膵被膜の切離が進行すると動脈沿いの神経を注意深く牽引することによりさらに深部の郭清が容易になる.この様に,膵臓自体を直接圧排・牽引する事のない愛護的な方法で手術を行っている(新展開法).
【手術成績】2015年1月から2016年6月までに幽門側胃切除術または幽門保存胃切除術を施行した症例66例を対象とした.2016年1月から新たな膵上縁展開法を開始(n=23),2015年12月まで施行していた従来法(n=43)との術後ドレーン排液AMY値の比較を行ったところ,術後1日目のドレーン排液AMY値は新展開法群で有意に低値であった(p=0.046,従来法:2219(396-16854),新展開法:1930(464-8948)(値は中央値(最小値-最大値)).
【まとめ】膵臓を極力触らない膵上縁郭清により,膵液漏の減少が望める.今後は症例を重ねて検討をしたい.
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