演題

RS3-164-16-6

胸腔鏡下食道亜全摘術の術中画像から考察する人体発生に基づいた縦隔解剖モデル

[演者] 藤原 尚志:1
[著者] 佐藤 中:1, 堀切 康正:1, 佐藤 琢爾:1, 岡田 尚也:1, 海藤 章郎:2, 木下 敬弘:2, 藤田 武郎:1, 大幸 宏幸:1
1:国立がん研究センター東病院 食道外科, 2:国立がん研究センター東病院 胃外科

縦隔は,腹部領域における中腸回転および癒合筋膜の形成のような確立した外科解剖理論がいまだ解明されていない領域である.近年,胸腔鏡手術の導入により拡大視の術中画像が共有されて,食道癌手術に関する微細解剖の理解は進みつつあるが,未だ統一見解には至っていない.そこでわれわれは縦隔解剖に関して人体発生の知見に基づいて外科解剖を考察した. 食道は,鰓弓発生の一環として生じる頚部~上縦隔領域と,気管分岐部以下の中下縦隔領域とではその周辺構造が明らかに異なっている.この相違に着目して,特に上縦隔において,人体発生に基づく同心円状構造を前提とした上縦隔解剖モデルを作成した.上縦隔モデルの詳細は,気管・食道・反回神経およびその周囲脂肪組織を含む芯となるVisceral Layerがその中心であり,このVisceral Layerを軸として大動脈弓,総頸・鎖骨下動脈および奇静脈弓などの主要血管とその周囲脂肪織を含むVascular Layerが同心円状に全周を包んで,さらに外周に胸郭を形成するNeural Layerがあり,全体として同心円状・左右対称構造を形成しているというものである.Visceral LayerとVascular Layerの境界は疎性結合組織の層状構造が連続的に確認できて,末梢血管・神経はVascular LayerからVisceral Layerへ乗り換えて気管・食道へ分布していた.迷走神経は総頸動脈に伴行して頚部から上縦隔へ下行するが,反回神経分岐時に迷走神経と反回神経はいずれもVascular LayerからVisceral Layerへ移行しており,反回神経はVisceral Layerを喉頭まで上行,また迷走神経もVisceral Layerを気管・食道と伴行して下行するものと考えられた.このVisceral Layer とVascular Layerの間隙は上縦隔郭清の際の郭清境界となり,この点では上縦隔解剖は本質的には左右対称性である.またVisceral Layerそのものが以前から言われている,いわゆる食道間膜であると考察された. 以上で示したVisceral LayerとVascular Layerとその境界を規定することで食道癌手術・上縦隔郭清の際の予防的郭清範囲を合理的に規定し得る.縦隔解剖モデルに沿った上縦隔における新しい外科解剖を示しつつ,近接視野の術中画像を提示する.
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