演題

RS1-17-9-3

移植肝冷保存後の水素還流は冷阻血/再灌流障害を抑制する ~単純冷保存の改善に向けて~

[演者] 玉木 一路:1
[著者] 秦 浩一郎:1, 岡村 裕輔:1, Yermek Nigmet:1, 平尾 浩史:1, 久保田 豊成:1, 日下部 治郎:1, 吉川 潤一:1, 稲本 道:1, 上本 伸二:1
1:京都大学大学院 肝胆膵・移植外科学

目的: 水素は,強力な抗酸化作用と共に高い組織浸透性を有し,かつ活性酸素中和後に水分子しか生じない無害性を有する.今回,移植肝冷保存後の虚血再灌流障害(IRI)に対する 水素還流の保護効果を検討した.
方法: ラット全肝グラフトを冷保存(4℃ UW液,24時間)後に以下の4群に分け,①PV群:水素含有液(1.0ppm, 40ml)を門脈から灌流,②HA群:肝動脈から灌流,③PV+HA群:門脈,肝動脈から両灌流,④溶媒投与の対照群(各群10例),保存後の肝障害と機能を酸素化体外灌流(37℃, 2時間)により比較・検討した.
結果: 再灌流後の肝逸脱酵素は,水素還流3群で対照群より有意に低下し(AST, ALT, LDHともp<0.005),移植肝からのHMGB-1放出も有意に軽減された(p<0.05).門脈圧も水素投与群でいずれも有意に低下した(p<0.001).類洞内皮細胞機能を表すヒアルロン酸クリアランスは 門脈から水素還流した2群(PV群, PV+HA群)で,また胆汁産生量は動脈から水素還流した群(HA群, PV+HA群)で有意な改善を認めた.胆管障害の指標である胆汁中LDHは動脈還流にて有意に低下したが(p<0.05),門脈投与では胆管保護効果は認められなかった.病理学的に水素による肝細胞空胞変性の軽減に加え,電顕像で水素による肝細胞ミトコンドリア障害の抑制と,門脈投与による類洞内皮,動脈投与による胆管障害の抑制を認めた.これら水素還流による保護機構として,再灌流に伴う酸化ストレスの有意な軽減が確認された.
結論: 移植肝冷保存後の水素還流は,IRIを有意に軽減した.その安全性と簡便性を併せ考えれば,新たな治療手段として有望であると考えられた.

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