演題

RS1-16-9-5

直腸癌術前補助療法におけるCD8+腫瘍浸潤リンパ球の意義

[演者] 松谷 慎治:1
[著者] 渋谷 雅常:1, 前田 清:1, 永原 央:1, 福岡 達成:1, 天野 良亮:1, 田中 浩明:1, 六車 一哉:1, 平川 弘聖:1, 大平 雅一:1
1:大阪市立大学大学院 腫瘍外科学

【背景と目的】近年,局所進行直腸癌に対する局所制御を目的とした術前補助療法(化学療法,化学放射線療法)が本邦でも普及しつつあるが,治療効果が乏しい場合では腫瘍が進行し拡大手術が必要となったり,根治切除が不可能となることもある.そのため術前治療の効果予測は重要であるが現在確立した治療効果予測因子は存在しない.一方,悪性腫瘍において宿主の免疫応答は治療効果に寄与するとされる.特に細胞傷害性Tリンパ球(CD8+Tリンパ球)は癌免疫応答での中心的役割を担い,癌細胞を直接傷害することや,化学療法や放射線療法の治療効果を増強させることが報告されている.そこで,直腸癌術前補助療法における治療効果予測を目的とし,腫瘍浸潤リンパ球:Tumor-infiltrating lymphocytes(TILs),特にCD8+TILsに注目し,治療効果との関係につき検討した.
【対象と方法】2010~2016年に局所進行直腸癌に対し術前補助療法(化学療法または化学放射線療法)を施行後,根治切除を施行した51例を対象とした.切除標本での組織学的効果判定を行い,Grade0-1aを効果不良群,Grade1b-3を奏効群と定義した.抗CD8抗体による免疫組織染色を行い,生検標本に関してはランダムに,また切除標本に関しては腫瘍先進部で,400倍視野でのCD8+TILs数を測定し5視野の平均値を算出した.Grade3の症例については,切除標本において腫瘍が消失した繊維化・瘢痕組織中のリンパ球を測定した.
【結果】術前治療前の生検標本が存在する25例のうち,14例は効果不良群に,11例は奏効群に分類された.生検標本でのCD8+TILs数のcut-off値を6.6に設定したところ,高CD8+TILs群(n=15),低CD8+TILs群(n=10)に分類され,低CD8+TILs群では効果不良症例が有意に多かった(p=0.048).一方切除標本51例のうち,25例は効果不良群に,26例は奏効群に分類された.切除標本でのCD8+TILs数のcut-off値を10.8に設定したところ,高CD8+TILs群(n=28),低CD8+TILs群(n=23)に分類され,低CD8+TILs群では効果不良症例が有意に多かった(p<0.001).また,術前治療前後でCD8+TILs数は増加する傾向が示された(p=0.055).
【結語】直腸癌術前補助療法の治療効果予測因子として,治療前生検標本におけるCD8+TILsが有用である可能性が示唆された.また,切除標本のCD8+TILs数も治療効果との相関が認められた.
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