演題

RS1-13-9-1

食道小細胞癌と類基底細胞癌の鑑別診断における免疫組織化学的特性と予後の検討

[演者] 石田 裕嵩:1
[著者] 笠島 敦子:2, 中野 徹:1, 谷山 裕亮:1, 櫻井 直:1, 武山 大輔:1, 佐藤 千晃:1, 藤島 史喜:2, 亀井 尚:1, 笹野 公伸:2
1:東北大学大学院 先進外科学, 2:東北大学大学院 病理診断学

【背景と目的】本邦における食道癌の組織型は9割以上が扁平上皮癌であり,小細胞癌 (small cell carcinoma, SmCC)や類基底細胞癌(basaloid-squamous carcinoma, BSC)は稀である.SmCCは食道悪性腫瘍の0.05-3.1%と稀な組織型であるが,急速な増殖を示しその予後は極めて不良である.BSCは0.07-7.3%の発生率で,組織形態学的にSmCCに類似しており特に生検の小検体では鑑別が困難なことが多い.SmCCとBSCの標準治療は確立していないが,一般的にSmCCは小細胞肺癌に準じた化学療法,BSCは手術を含む集学的治療が選択されるため,鑑別は非常に重要である.両者の手術成績を検討するとともに免疫組織化学的に鑑別が可能か検討した.【対象と方法】外科的切除された食道のSmCC 15例とBSC 36例を用いた.免疫組織化学的に神経内分泌マーカー(SYN,CgA),扁平上皮マーカー(CK5/6,p40),腺上皮マーカー(CK18,CEA),Ki-67,Retinoblastoma(Rb),p16の発現と治療成績を検討した.【結果】SmCCはBSCと比較して,神経内分泌マーカーと腺上皮マーカーの発現が高く,扁平上皮マーカーの発現は有意に低かった(いずれもp < 0.001).Rb陽性率は,SmCC (0.3±1%, 中央値: 0%)が,BSC (48±24%, 中央値: 40%)に対して有意に低値を示した(p < 0.001).p16陽性率は,SmCC (83±9%, 中央値: 88%)が,BSC (4±15%, 中央値: 0%)に対して有意に高値を示した(p < 0.001).SmCCの1-,3-,5年生存率は,53.9%,8.9%,8.9%で,生存期間中央値は15ヶ月,BSCは80.3%,62.8%,47.7%,中央値が60ヶ月であり,SmCCが有意に予後不良であった(p < 0.001).【考察】SmCCがBSCと比較して有意に予後不良であることが初めて示された.両者は組織像が類似しているが,治療法や予後の違いから病理診断の際に正確な鑑別が必須である.免疫組織化学法は両者の鑑別に極めて有用であり,SmCCでは扁平上皮マーカーおよびRbの低発現,腺上皮マーカーおよびp16は高発現を示すのに対し,BSCではそれぞれ対称的な染色性を示す.また小細胞肺癌と同様で,SmCCにおいてもRb蛋白発現抑制が発癌と神経内分泌分化に寄与している可能性が示唆された.p16は癌抑制遺伝子で,通常の癌腫では発現が低下しているが,SmCCのp16びまん性高発現は,Rbの蛋白発現抑制に強く関与していると考えられた.両者の陽性率が全く異なり,鑑別において特に有用なマーカーであり,より適正な治療法の選択に寄与できる可能性が示された.
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