演題

RS3-122-7-4

背景肝実質CT値に着目した肝葉切除における大量出血危険因子の検討

[演者] 佐野 周生:1
[著者] 山本 有祐:1, 杉浦 禎一:1, 岡村 行泰:1, 伊藤 貴明:1, 蘆田 良:1, 加藤 吉康:1, 大木 克久:1, 山田 美保子:1, 上坂 克彦:1
1:静岡県立静岡がんセンター 肝・胆・膵外科

【目的】多時相造影CTにおいて肝実質CT値は各相での肝血流分布を反映する.今回我々は,非腫瘍部の肝実質CT値が肝葉切除術の出血予測に有用か検討した.
【対象と方法】2011年1月から2016年5月の期間,肝腫瘍に対し当院で施行した肝葉切除(尾状葉合併切除を含む)は284例であった.肝部分切除併施例や多臓器同時切除例を除いた133例のうち,術前に造影3相以上のCTが撮像された120例を対象とした.単純,(後期)動脈相,門脈相,平衡相の各相で非腫瘍部肝実質にROIを設定,平均CT値を測定し,1)出血量との相関因子の検討,2)出血量1000mL以上の大量出血の危険因子の検討,3)大量出血予測スコアの作成を行った.
【結果】対象疾患は肝細胞癌54例,肝内胆管癌13例,転移性肝腫瘍42例,その他11例で,術式は右葉切除67例(56%),左葉切除53例(44%)で,32例(27%)が拡大葉切除で,背景肝は正常肝73例(61%),慢性肝炎39例(33%),肝硬変8例(7%)であった.出血量中央値は804ml(163-9300ml)で44例(37%)で1000ml以上の大量出血に至り,16例(13%)で赤血球輸血を要した.背景肝実質CT値の中央値は単純60HU,動脈相91HU,門脈相118HU,平衡相100HUであった.37例(31%)の症例で門脈塞栓術(PTPE)を施行した.1)肝実質CT値は平衡相を除いて術中出血量と負の相関を認め(単純(相関係数-0.23, p=0.013),動脈相(同-0.23, p=0.014),門脈相(同-0.24, p=0.008),平衡相(同-0.12, p=0.18)),最も相関係数の高い門脈相を用いて出血量の解析を行った.CT値以外の背景因子では,BMI(相関係数0.20, p=0.025),AST(同0.23, p=0.011)が術中出血量と正の相関を認めた.2)大量出血群44例(37%)は門脈相の肝実質CT値が低値であった(119HU vs 115HU, p=0.025)が,背景肝の性状,肝炎ウイルス,PTPE,拡大切除,ICG, 血小板数,PT活性は両群間に有意差を認めなかった.ニ項ロジスティック回帰分析の結果,腫瘍径≧85mm(OR:3.2, p=0.036),γ-GTP≧70(OR:2.7, p=0.034),門脈相肝実質CT値≧123HU(OR:4.0, p=0.009)が独立した大量出血の危険因子であった.3)各因子に1点を配点しスコア化を行ったところ,大量出血の頻度は0 点(n=15), 1 点(n=61), 2点(n=34),3点(n=10)でそれぞれ7%,28%,56%,70%であった.
【結語】門脈相肝実質CT値は肝葉切除術の出血量と相関し,独立した大量出血危険因子であった.腫瘍径,γ-GTP, 門脈相肝実質CT値に基づいたスコアリングは大量出血予測に有用である.
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