演題

RS2-58-6-6

胃癌リスク予測を可能にする胃粘膜エピゲノム診断:二つの胃癌リスク診断多施設共同前向きコホート研究

[演者] 前田 将宏:1,2
[著者] 中島 健:3, 小田 一郎:3, 島津 太一:4, 山道 信毅:5, 前北 隆雄:6, 浅田 潔:1, 坂井 義治:2, 牛島 俊和:1
1:国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野, 2:京都大学大学院 消化管外科学, 3:国立がん研究センター中央病院 内視鏡科, 4:国立がん研究センター社会と健康研究センター 予防研究グループ, 5:東京大学大学院 消化器内科, 6:和歌山県立医科大学医学部 内科学第二講座

胃癌はピロリ菌除菌後も一定の割合で発生する.早期胃癌内視鏡治療後の患者は異時性多発胃癌の超高危険度群だが,これまで高精度なリスクマーカーは確立していなかった.また急増する除菌後健康人において,初発胃癌の早期発見,早期治療のためには高リスク群の捕捉が重要である.
我々は,これまでピロリ菌感染者の胃粘膜にDNAメチル化異常が蓄積していること,その程度(メチル化レベル)は胃発癌リスク(胃癌の既往歴)と強く相関することを横断的解析にて明らかにしてきた.

【異時性多発胃癌リスク診断多施設共同前向き研究】
超高リスク群である胃癌内視鏡治療後患者を対象に,除菌後に幽門部より内視鏡生検を行い,予定した3遺伝子(miR-124a-3, EMX1 and NKX6-1)のメチル化レベルを測定した.その後胃癌発生をイベントに毎年内視鏡観察を行った.3年次解析ではエピゲノム異常による発癌リスク診断の有用性を証明した(Asada, et al., Gut 2015).長期観察(5年次)解析ではより明瞭な結果が示された.経過観察した795例中133人に,観察開始後1年以内に発見された見逃しの可能性のある胃癌を除くと116人に異時性多発胃癌が発生した.マーカー遺伝子miR-124a-3のメチル化レベルに基づき症例を四分位に分けると,メチル化レベル最低群に比べ,最高群では胃癌累積発生率が有意に高く(p<0.0001),胃発癌リスク因子で調整した多変量解析によるハザード比は3.0(95%CI: 1.58-5.72, p=0.0017)とリスクの層別化が可能であることを示した.他の二つのマーカーに関しても同様の結果であった(Maeda, et al., Gut in press).

【初発胃癌リスク診断多施設共同前向き研究】
開放型萎縮性変化を有する除菌後健康人(2,000人)を対象に初発胃癌リスク診断を行う大規模多施設前向き臨床研究 (UMIN000016894)を2015年より全国66施設の参加のもと開始した.

【本研究の展望】
本研究の実用化により,除菌後健康人集団での高リスク群の捕捉が可能になれば,メチル化レベルに応じた検診間隔の適正化につなげられる可能性があり,これは胃切除術後の残胃のサーベイランスにも応用できる可能性がある.環境要因により発生する癌においては組織に蓄積したゲノム・エピゲノム異常を測定することでリスク予測が可能である.
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