演題

SY04-7

肝腎同時移植適応の観点から見た肝移植直前の急性腎不全が移植予後に与える影響: 腎不全時の安全な肝移植

[演者] 長井 俊志:1
[著者] Safwan Mohamed:1, 高橋 一広:1, Kelly Collins:1, Michael Rizzari:1, Atsushi Yoshida:1, Marwan Abouljoud:1
1:Henry Ford Hospital

【目的】日本における肝腎同時移植は症例数が増加してきている一方,その適応基準は先行的献腎移植の登録に準じており,必ずしも肝不全に伴う腎障害という背景を考慮していない.重度肝腎症候群に伴う 肝硬変患者に対する移植が増加すると予想される中,肝腎同時移植の適応に関し早急な議論が必要である.長期透析中の肝硬変患者に対する肝腎同時移植はすでにコンセンサスが得られているが,急性腎不全に伴い透析を必要とした際にいかに移植の適応を決定するかは日本をはじめ欧米においても明確な基準は定まっていない.今回の研究では,肝単独移植術前に急性腎不全を呈した患者の予後を肝腎同時移植のそれと比較し,肝単独ならびに肝腎同時移植の適応について検討した.
【方法】2009年から2015年までに実施した532例の初回肝移植患者を対象とした.原則透析期間4週間以上の患者に対し肝腎同時移植が施行された.肝腎同時移植症例(44例)を術前腎不全を呈し透析療法を必要とした肝単独移植症例(40例)と予後を比較した.肝単独移植症例はさらに術前GFR<30mL/min/1.73m2が3週間以下(Group 1; 24例)と3週間超(Group 2; 16例)に分けて検討した.
【成績】術前の透析必要期間はGroup 1で有意に短かった(7日 vs. 18日, P<0.05).Group 1は肝腎同時移植群と比較し有意に1年グラフト生存率が悪化していた(66% vs. 93%, P=0.01).一方Group 2と肝腎同時移植群は同等の1年グラフト生存率であった(88% vs. 93%, P=0.52).術後の透析療法はGroup 1で100%,Group 2で87%で必要となった.Group 1では7名が1年以内に死亡した.うち5名は死亡時まで術後一貫して透析療法を必要としていた.Group 2では1名の術中死を除き1名が1年以内に死亡したが死亡理由は悪性腫瘍であった.術後12ヶ月のGFRは肝腎同時移植群,Group 1,Group 2でそれぞれ63, 47, 45mL/min/1.73m2であり肝腎同時移植群で有意に良好であったが,Group 1と2では同等であった.一方で術後1年以後のグラフト生存率はこれら3群で差を認めなかった(P=1.0).
【結論】肝単独移植直前に急激な腎機能低下に伴い透析療法を必要とした場合,術後持続的な腎不全に陥り,短期予後悪化につながる可能性が高い.安全な肝移植施行のため,術前急性腎不全の原因が明らかとなり状態が安定するまで,肝単独移植施行の判断を留保する必要があり,腎機能悪化が遷延する際には肝腎同時移植の適応を積極的に考慮すべきであろう.
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