演題

RS2-89-14-4

術中低体温と手術部位感染

[演者] 古川 大輔:1
[著者] 矢澤 直樹:1, 山田 美鈴:1, 増岡 義人:1, 益子 太郎:1, 藤城 健:1, 貞廣 荘太郎:1, 中郡 聡夫:1, 小澤 壯治:1
1:東海大学医学部 消化器外科学

【背景】WHOのガイドラインやERASなどで周術期体温管理の重要性が認識されている.術中の体温低下は,麻酔導入直後は熱の再分布,それ以降の熱産生と喪失の負のバランスから低体温が生じる.術中体温低下に関して長時間手術に限定した検討は少ない.【目的】術中最低体温,手術終了時低体温,低体温の持続時間とSSIの関係について明らかにする.【方法と対象】2010年8月から2016年4月の手術時間が2時間以上であった待機的膵切除328例を対象として,後方視的に検討した.術中体温は麻酔導入後にアミノ酸製剤の投与と温風式加温装置を適宜使用したが統一したプロトコールはなかった.体温は直腸温または鼓膜温を測定した.【結果】(検討1)術中に体温低下(最低体温36.0℃未満)がみられた症例は151例(46.0%)であった.術中最低体温のSSIに対するOdds ratio(95%CI)は,全SSI:0.82(0.53-1.28) P=0.39,表層SSI:1.06(0.69-1.79) P=0.81,臓器SSI:0.72(0.46-1.14) P=0.16であり,術中の最低体温を指標にした低体温はSSIのリスク因子ではなかった.(検討2)手術終了時に低体温(36.0℃未満)がみられた症例は54例(16.4%)であった.手術終了時低体温(36.0℃未満)のSSIに対するOdds ratio(95%CI)は,全SSI:1.34(0.74-2.41) P=0.32,表層SSI:2.03(1.07-3.86) P=0.02,臓器SSI:1.15(0.63-2.10) P=0.62であった.表層SSIのリスク因子であった低Alb血症(Alb<3.5g/dl),術式(PD/TP),手術時間(300分以上),出血量(1000ml以上)を加え多変量解析を行うと,低Alb血症(OR 2.97(1.59-5.53) P=0.001)に加え,手術終了時低体温(36.0℃未満)(OR 2.00(1.01-3.99) P=0.04))が独立したリスク因子であった.(検討3)低体温(36.0℃未満)の持続時間と表層SSIとの影響について検討した.表層SSIに対して,36.0℃未満の時間が30分以上(OR 1.05(0.62-1.78) P=0.84),60分以上(OR 1.26(0.74-2.16) P=0.38),120分以上(OR 1.84(1.05-3.23) P=0.03)であった.多変量解析では120分以上の体温低下はOR 1.50(0.82-2.73) P=0.18と有意な因子ではなかった.ただし36.0℃未満の持続時間が長くなれば手術終了時の体温は低下する傾向にあり(r=-0.65 P<0.01),低体温の期間を短くすることが手術終了時の正常体温につながる可能性が示唆された.【結語】長時間手術において手術終了時の低体温(36.0℃未満)は表層SSIのリスク因子であった.手術終了時の正常体温を目標とした術中保温・加温はSSI予防に重要である.
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