演題

SY04-5

安全・安心な臓器移植を実施するための生体ドナーに対する危機管理プログラムの重要性

[演者] 曽山 明彦:1
[著者] 高槻 光寿:1, 長井 一浩:2,3, 宮崎 泰司:2,3, 栗原 慎太郎:2, 日高 匡章:1, 足立 智彦:1, 大野 慎一郎:1, 夏田 孔史:1, 江口 晋:1
1:長崎大学大学院 移植・消化器外科学, 2:長崎大学病院 安全管理部, 3:長崎大学病院 細胞療法部

【背景】脳死下臓器提供数増加を目指した取り組みを継続すると同時に,生体ドナーからの移植に頼らざるを得ない現状において,いかに安全に生体ドナーからの臓器提供を行うかは,極めて重要である.「生体ドナーの死亡や永続的な合併症」は起こりうることと認識し,危機管理プログラムを構築することが望ましい.【目的】長崎大学病院では,臓器・組織・細胞移植療法の生体ドナーで起こる可能性のある重篤,永続的,および致死的な障害発生時における危機管理プログラムとして,本邦初のDonor advocacy team (DAT)を設立した.その詳細を報告する.【DATの実際】DATは,医師,リスクマネージャー,心理カウンセラー,広報担当者,法律担当者,生命倫理学者等により構成される.その目的は,1. 当事者である患者,家族への身体的・精神的ケア,2. 診療担当者への精神的ケア,3. 診療科,病院スタッフの対応の統一,4. 社会への迅速な情報公開,5. 移植医療システム全体へのダメージを最小限に留め,その改善に繋げられるようにすることである.情報収集,公開に関しては,行政,マスメディア,移植関連学会,臓器移植ネットワーク等への連絡・対応のワークフローを確立している.情報収集から関係者への状況説明までを2時間以内に行う.その後,正確な事実確認に基づいた一次公表を3日以内に行う.【シミュレーション】下記の例のような,種々のシチュエーションを想定し,ワークフローに沿ったシミュレーションを行っている.Case1) 術後腹腔内膿瘍を契機とした敗血症を発症し,肝不全の状態となった.Case 2) 術中に,不整脈を認め,血圧低下.ドナー手術を中断し,ICUへ搬送するも循環不全改善せず.Case 3) グラフト摘出後,肝静脈にかけた鉗子が外れ,下大静脈から大量出血を認め,大量輸血を必要とした.ワークフローにおいては,外科医は,移植医療担当者として,術中術後の危機的状況の正確な状況把握・伝達と初期対応が求められる.【結語】安全,安心な臓器移植を実施するために,生体ドナーの安全性を確保し,死亡や不可逆性合併症などの稀ではあるが発生しうるイベントに対応すべく,危機管理プログラムの設立し,施設として準備しておくことが重要である.外科医は,移植医療担当者として,またDonor advocacy teamの一員として,事例発生時に速やかな対応を行えるように準備しておくことが重要である.
詳細検索