演題

RS3-129-9-2

肝細胞癌に対する肝切除の周術期血清亜鉛値の栄養学的意義に関する研究

[演者] 中西 渉:1
[著者] 清水 健司:1, 宮澤 恒持:1, 原 康之:1, 戸子台 和哲:1, 中西 史:1, 宮城 重人:1, 亀井 尚:1
1:東北大学大学院 先進外科学

【目的】必須微量元素である亜鉛は生体内で創傷治癒の促進など多種多様な機能を担っている.肝細胞癌の血清亜鉛値は,栄養学的指標の一つとして有用であるとの報告や,肝線維化や術後の予後との関連も報告されている.本研究では当科において肝細胞癌に対する肝切除を行った症例の周術期における血清亜鉛値と栄養学的評価との関係を後ろ向きに検討し,血清亜鉛値の栄養学的意義について研究した.
【方法】対象患者は当科において2014年8月から2016年8月までHCCに対して肝切除を受け,術前および術後7日目に間接熱量計による呼吸商および安静時エネルギー消費量の測定を行った40症例である.術前血清亜鉛値と血清ALB, preALB, transferrin,branched amino acid to tyrosine ratio (BTR), CRP,総リンパ球数,総コレステロールとの相関を検討した.またCONUT値,ICGR15分値,HOMA-IRによるインスリン抵抗性についても調査した.血清亜鉛値を術前および術後1,3,5,7病日で測定し周術期の変動を観察した.また術前血清亜鉛値65μg/dl未満と65μg/dl以上の2群にわけて術後在院日数と周術期の合併症を比較検討した.呼吸商および安静時エネルギー消費量についても2群にわけて比較検討した.
【結果】術前血清亜鉛65μg/dl未満は36%で認めた.術前血清亜鉛値は血清ALB(r=0.509, p= 0.0007), preALB(r=0.449, p=0.0032)およびBTR(r=0.368 p=0.017)と正の相関を, CONUT値と負の相関(r=-0.34, p=0.0268)を示した.血清亜鉛値は術後1日目で最低値をとり7日目で術前と同程度に回復したが,亜鉛低値群では回復が遅れる傾向を認めた.呼吸商は術前と比較して術後7日目で低下したが(p=0.0004),両群間では差を認めなかった.術前の安静時エネルギー消費量は両群間で差を認めなかったが,術後7日目では有意に低亜鉛群において高値を示した(p=0.0462).周術期の合併症および在院日数には両群で差を認めなかった.
【結論】肝細胞癌の術前症例では血清亜鉛低値が多くみられ,術直後より急速に低下することから,周術期における亜鉛補充の必要性が示唆された.血清亜鉛は栄養状態と相関しており,有用な指標の一つと思われた.亜鉛低値症例では術後必要なカロリーは高くなる可能性を考慮して栄養学的介入を行う必要があると思われた.
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