演題情報

特別講演

開催回
第60回・2015年・横浜
 

血液浄化器はどのように誕生し、高性能化を求めてどのように進化してきたか

演題番号 : SL-6

酒井 清孝:1

1:早稲田大学名誉教授

 

血液浄化器は、臨床的にも技術的にも、人工臓器の中で最も成功した生体機能代行装置である。生体腎と異なる分離メカニズムである拡散(透析)で、腎不全患者さんを最長45年(日本の統計)も延命させることに成功している。ここに到るまで、拡散の原理が発見されてから約160年、血液浄化の概念が提案されてから約100年、腎不全患者さんの救命に拡散(透析)の原理を用いて初めて成功してから約70年が経過した。
これまでの血液浄化器開発のepoch-makingな出来事は
1.Abelらが1903年に開発したvividiffusion(生体拡散)装置(血液浄化の概念)
2.Kolffらが1945年に腎不全患者さんの救命に初めて成功した回転ドラム型透析器の開発
3.米国Cordis-Dow社が1968年に脱酢酸再生セルロース膜を用いた使い捨て中空糸型透析器の開発
である。将来的には、緊急災害用・救急用小型血液浄化器の開発であろう。
これまでの血液浄化膜開発のepoch-makingな出来事は
1.ドイツEnka社による医療用Cuprophan@膜(再生セルロース膜)の開発(1950年代後半の平膜と1966年の中空糸膜)
2.中分子仮説の提案(1965年)によって、分子量の大きい尿毒素を除去することを目的としたAN69@膜(ポリアクリルニトリル膜)の開発(1969年)
3.脱酢酸再生セルロース膜を用いた中空糸型透析器の考案(1964年)によって、1970年代前半からの各種素材による中空糸透析膜の開発
4.β2-ミクログロブリン(1985年下条文武)に代表される分子量が非常に大きい尿毒素を除去することを目的とした高性能血液浄化膜の開発
である。将来的には、生体適合性、選択性に優れた血液浄化膜の開発であろう。
優れた血液浄化膜が開発されたとしても、それを用いて臨床で優れた尿毒素除去性能が得られるとは限らない。臨床で優れた成果が得られないといって、血液浄化膜の性能が不足していると即断してはならない。血液浄化膜は単独では臨床で使えない。血液浄化器に充填して初めて臨床に用いられる。この至適モジュール設計が血液浄化膜の尿毒素除去性能を発揮するのに重要で、化学工学が力を発揮できる分野である。
本講演では、血液浄化の概念、血液浄化器の製作、血液浄化膜の多様化と進化、血液浄化器と血液浄化膜のこれまでとこれからのまとめ、について語りたい。

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