演題情報

特別講演

開催回
第60回・2015年・横浜
 

再生医療が切り拓く先端医療

演題番号 : SL-3

岡野 光夫:1

1:東京女子医科大学先端生命医科学研究所名誉教授・特任教授

 

20世紀にバイオ医薬品や人工臓器が大きく発展し、多くの疾病が治療可能になってきているものの、未だ多くの患者が難病や障害で苦しんでいる。再生医療への期待が高まる中、細胞や組織を人工的に培養して増殖させ、これを治療に使うことで難病や障害の再生医療による克服が求められている。この実現には医学と工学が連携した新領域の発展が必須であり、その新しい取り組みが進んでいる。
我々は、医学と工学を融合させて細胞シート工学を創出、再生医療への応用を世界で初めて提案し、その実現に向けて系統的な研究を行っている。細胞培養皿の表面に温度応答性高分子であるポリN-イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)をナノレベルの超薄膜で表面に均一に固定、温度応答機能を持つインテリジェント表面を開発した。これにより、37℃から20℃に変化させることで培養細胞を接着・増殖させ、単層の細胞シートを作製した後に、その構造と機能を損なうことなく剥離・回収することに成功した。さらに、すべての組織をシート状に加工した培養細胞から積層化・組織化する技術に取り組んでおり、これを細胞シート工学とよんでいる。即ち薄い細胞シートを構成要素とし、厚い組織が薄い細胞シートの層状組織から生じることに注目して研究を展開しており、この細胞シートを積層化し、組織を作製していくことでより高機能な組織となる。
現在、角膜、心筋、食道、歯根膜、軟骨、中耳のヒトの臨床研究を実行するまでに細胞シート再生医療の基盤が構築されつつある。医学と工学の融合を基盤とした新しい研究組織により、難病の根本治療に向けた細胞シート再生治療の適用拡大を強力に進めている。特に、細胞シート積層化を組織内に毛細血管を誘導し、生体に移植すると生体内の毛細血管とつながる。その後つぎつぎに細胞シート積層化組織を重ねて移植することで厚い組織が作れる。このin vivo の手法をin vitro でも再現を可能にし、今後の肝臓や膵臓の再生医療の基盤が着々と出来上がってきている。近い将来の再生組織の移植治療も見据えた効率性・安全性の向上を目指している。さらに、全自動で細胞シートを培養・積層化する技術の開発にも取り組み、再生医療の実現とその普及を目指している。

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